なぜ宅地建物取引士の資格には講習が多いの?

登録実務講習は2年以上の実務経験がない場合に必要となる講習です。

宅建士に関わる3つの講習 登録講習、登録実務講習、法定講習

宅地建物取引士(以下、取引士と省略します)は、土地や建物の売買・交換・貸借といった契約を結ぶにあたって、その購入者等へ法的な説明とそれを記した書面(重要事項説明書面・契約書面)への記名押印をすることを中心とした法律業務を行います。衣食住に関わる重要な財産を扱うので、「間違えました。すみません」では済まされません。実際、毎年多くの宅建業者や取引士が購入者等から訴えられ、免許取消や事務禁止処分等の監督処分を受けています。

不動産取引に関する法律は、税法を含めると、ほぼ毎年改正されております。また、最高裁判所が出す判決は1000近くにもなります。取引士は、常に最新の法律や判例を知っていなければ購入者等の利益を守ることも、宅建業者や自分自身を守ることもできません。

そこで、取引士という資格には多くの講習が必要とされるのです。
それは、『登録講習』『登録実務講習』『法定講習』の3つです。

すべて受講する義務があるわけではありませんが、『登録講習』は受講すれば宅建試験で5問分が免除され、『登録実務講習』は2年間の実務経験を待たずに資格登録でき、『法定講習』は受講すれば取引士証が更新されるという効果があるので、事実上義務的な講習となっています。

登録講習とは?

別名、「5問免除講習」とか、「5点免除講習」と呼ばれている講習です。

《講義時間と受講形態》

宅建試験の出題や市販のテキストの中ではほとんど出てきませんので、知らない方も多いかと思います。これは、宅建業者に勤務する方だけが受講できる講習で、50時間の学習と1時間の修了試験で構成されるものです。

法律上は50時間すべてを対面式の授業でしてもよいことになっていますが、最低10時間は対面式の授業で行うことが義務付けられているので、実施機関のほとんどが、約2ヶ月間の通信講座の後に2日間で10時間の対面式の授業を行うという方法を採っています。

対面式の講義は必ず講師が直接教えることになっており(収録した動画を流したり、サテライト方式で遠隔的な講義もできません)、わからないことや、学習の悩みを講師に直接質問や相談ができることも特徴です。

《講義内容》

講義内容は宅建試験の出題範囲と80%が重なります。重ならないのは、物件調査だけです。ただ、物件調査は宅建業者にお勤めの方なら日々の職務に関わるとても大事なものなので、宅建試験には出なくても明日からの仕事に役立つ内容だったりします。講義のカリキュラムと時間配分は以下の通りです。( )内は学習時間の目安です。

1 この法律その他関係法令に関する科目(18時間)
2 宅地及び建物の取引に係る紛争の防止に関する科目(12時間)
3 土地の形質、地積、地目及び種別並びに建物の形質、構造及び種別に関する科目(5時間)
4 宅地及び建物の需給に関する科目(5時間)
5 宅地及び建物の調査に関する科目(5時間)
6 宅地及び建物の取引に係る税務に関する科目(5時間)

《修了試験》

修了試験は実施機関にその作成と採点が任されていますので、どの実施機関で受講するかによって内容が異なります。ただ、多くは宅建試験と同じく四肢択一式のマークシート式で実施され、問題数は20問程度となっています。70%以上の正解で合格とするところが多いです。

修了試験に合格すると修了証が3通もらえます。その修了証を願書に添付して申請すると、宅建試験で問46から問50までの5問分が正解しているものとして計算されます。修了試験に合格した登録講習の受講者の合格率は、そうでない受験者より10%程度高くなっているのが現実です。点数を買っているだけなんじゃないの? と斜に構えずに、宅建試験対策にも仕事にも直接役立つ内容であると自覚して受講するのがコツです。

《受講時期・費用等》

受講時期に関する制限はありません。実施機関により開講時期や回数が異なります。ただ、宅建業者に勤務する新入社員の方が受講することが普通なので、4月に申し込み、6月~7月のスクーリングを受講する方が多いです。

費用は、実施機関によって異なります。1万円から2万円で実施されているのが普通ですが、後の講座を受講する等の条件付きでさらに安くしている機関が多いです。

《受講のコツ》

お勤めの宅建業者で宅建の講習を実施しているような場合、講師を派遣する予備校等で受講すると特別割引となっていることが多いので、まずは会社の人事や総務に相談することをお勧めします。

2日間は完全に仕事をお休みして授業を受けなければならないので、料金は格安だったけど授業は修了試験の解答を教えるだけのまったく役に立たないものだったでは、とてももったいない話です。ある程度厳しくしっかりと授業する実施機関を選んだほうがよいでしょう。

アルバイトでも受講できる場合があります(従業者証明書を有している必要があります)。受講可能かどうか実施機関に直接電話して確かめましょう。

登録実務講習とは?

宅建試験に合格した後に受験地の都道府県知事に資格登録する上で必要となる講習です。

《講義時間と受講形態》

宅建試験に合格した後、受験地の都道府県知事に登録の申請をするためには、2年以上の実務経験が必要です。この実務経験は総務や人事、経理、財務等の一般管理部門等の顧客との直接の接触がない部門に所属した、単に補助的な事務に従事した期間は含まれません。もしこの経験がない場合で、登録する場合に必要となるのがこの講習です。

登録実務講習も登録講習と同じく、合計50時間の講習です。ただ、通信学習の期間は約1ヶ月間となっており、登録講習よりも短く設定してよいことになっています。対面方式での講習は多くの実施機関で12時間程度となっています。そのうち1時間は修了試験に当てられます。

《講義内容》

講義内容は、宅地建物取引業の実務に関するものです。広告・受付・媒介・物件調査・重要事項説明書面の作成・37条書面の作成・資金計画・税務といった内容です。

その中でも物件調査と重要事項説明書面の作成については、実際に受講者ひとりひとりが作成し、担当講師の指導を受けるという方式で行われます。暗記した法令の知識が、実際の不動産取引でどのように活用され顧客にわかりやすく説明するにはどのように書面化するのかという実務的な内容に変化する楽しみを味わうことができます。講義のカリキュラムと時間配分は以下の通りです。

( )内は学習時間の目安です。

1 取引士制度に関する科目(1時間)
・取引士制度の概要
・取引士の役割及び義務
2 宅地又は建物の取引実務に関する科目(37時間)
・受付、物件調査及び価格査定の実務に関する事項
・媒介契約に関する事項
・宅地又は建物の取引に係る広告に関する事項
・宅地又は建物の取引条件の交渉に関する事項
・重要事項説明書面の作成に関する事項
・宅地又は建物の取引に係る契約の締結に関する事項
・宅地又は建物の取引に係る契約の履行に関する事項
・宅地又は建物の取引に係る資金計画及び税務に関する事項
・紛争の防止に関する事項
3 取引実務の演習に関する科目(12時間)
・取引の目的となる宅地又は建物の調査手法に関する事項
・重要事項説明の実施に関する事項
・宅地又は建物の取引に係る標準的な契約書の作成に関する事項

《修了試験》

修了試験は実施機関にその作成と採点が任されていますので、どの実施機関で受講するかによって内容が異なります。私の経営するスクールでは、40問の正誤式の問題と10問の記述式の問題で実施しています。記述式は、講義で使用するテキストと資料集を参照できますので、真面目に授業を聞いていれば必ず合格できる内容です。弊社の作る試験問題では、重要事項説明書面と売買契約書面の穴埋め式の記述問題にしています。80%正解すると修了証を発行します。

修了試験に合格すると修了証が1通もらえます。その修了証を各都道府県庁に取引士の登録申請をする際に提出すると、2年以上の実務経験がなくても取引士の登録が受け付けられ、取引士証の交付が受けられるようになります。

《受講時期・費用等》

受講時期に関する制限はありません。多くの実施機関は、宅建試験の合格発表後から半年以内に集中しています。
費用は、実施機関によりかなり異なります。12,000円程度の超安値を付けている機関もあれば24,000円程度の価格を付けているところもあります。

《受講のコツ》

現在、多くの民間機関が登録実務講習を実施するようになり、それぞれ特徴があります。

戸建の売買の媒介を中心に物件調査、重要事項説明書面の作成、37条書面の作成を少人数で行うものがスタンダードですが、都心部の講習では、それに加えて区分所有建物の分譲の場合の重要事項説明書面の作成方法も教えたり、場所によっては農地法の許可も含めた実際の実務的な取引も教えるところもあります(私の経営するスクールではそのようにしております)。

また、特別講演として、大手不動産会社の営業担当、人事担当、不動産取引専門の弁護士等に1時間程度の実践的な研修もあります。
事前に、実施機関に電話して聞いてみましょう。

法定講習とは?

宅地建物取引士証を登録先の都道府県知事から交付を受けるために必要となる講習です。

《講義時間と受講形態》

1日6時間の対面の講義で実施されます。

《講義内容》

講義内容は、5年分の法改正点と新判例が中心となります。取引士証の有効期間が5年間なので5年ごとにこの講習を受講する必要があります。ただし、宅建試験に合格した後1年以内であれば受講が免除されます。直近の法改正と判例を知っているからです。講義のカリキュラムと時間配分は以下の通りです。

1 紛争事例(判例・監督処分例と実務上の留意点)
2 関係法令(宅建業法、媒介契約、権利関係、法令制限)

《受講時期・費用等》

受講時期に制限はありませんが、毎月実施されているのが普通です。取引士証を更新する際に、期間満了の6ヶ月以内に実施される法定講習を受講する必要があります。
費用は15,000円程度となっています。


各種講習の問い合わせ先

・登録講習
国土交通省
http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk3_000074.html

・登録実務講習
国土交通省
http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk3_000068.html

・法定講習
社団法人 都道府県 宅地建物取引業協会
http://www.zentaku.or.jp/information/list.html
社団法人 全日本不動産協会
http://tokyo.zennichi.or.jp/
一般社団法人 不動産協会
http://www.fdk.or.jp/takken/index.htm
社団法人 日本住宅建設産業協会
http://www.zenjukyo.jp/
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