ヤン・ジュンモ 80年韓国・釜山出身。韓国芸術総合学校声楽科卒、ロシア国立ノボロシスク国立音楽院声楽科修了。オペラ出演を経て04年ミュージカル・デビューし、『スウィーニー・トッド』『ジキル&ハイド』『オペラ座の怪人』等に主演。トップ・スターとして活躍する傍ら、大学で教鞭をとり、後進の育成に努めたり、演出やプロデュースも手掛けるなど、多方面で活動している。(C) Marino Matsushima
日本初お目見えは2006年、日本で初演された韓国ミュージカル『冬のソナタ』。カンパニーで一人、別格の歌唱を聴かせ、“記憶の精”という異界のキャラクター役に説得力を与えていましたが、その後、本国でめきめき頭角をあらわし、『ジキル&ハイド』『オペラ座の怪人』等に主演。今や押しも押されぬ韓国ミュージカル・スターとなったヤン・ジュンモさんが15年、『レ・ミゼラブル』(14年公演についてのレポート記事はこちら)のジャン・バルジャン役で日本の舞台に戻ってきます。
『ジキル&ハイド』 (C) OD Musical Company
“日本語の歌唱”独特の課題と格闘中
――今回、あなたにとっては外国である日本のカンパニーへの参加を決意されたということで、『レ・ミゼラブル』という作品に対して相当の思い入れがおありなのでは、と想像します。
「はい、もともと原作が好きでよく読んでいましたし、一番好きな映画もリーアム・ニーソン主演の(ミュージカルではない98年のヴァージョンの)『レ・ミゼラブル』で、数えきれないほど観てきました。実は2006年に韓国で本作のオーディションがありまして、バルジャン役に受かっていたのですが、プロダクションの事情で延期になってしまったということがありました。それから10年近くが過ぎ、今回の機会を得たわけです。
ミュージカル俳優としてこれまで11年、“挑戦”をテーマにやってきました。俳優のかたわら大学で教鞭をとったり、プロデュースや演出も手掛けたりしてきましたが、今回の日本版『レ・ミゼラブル』への出演はこれまでで最も苦しく、同時に意義深い挑戦なのではないかと感じています」
――その「苦しさ」は言語の違いによるものでしょうか?
「そうです。本作は皆さんご存知のように、全篇歌で表現される作品ですので、言葉を100パーセント理解して歌うことが必須条件です。また俳優としての表現力も非常に求められる作品だと思います」
――日本語は今回が初挑戦ですか?
「ええ、オーディションに合格してからレッスンを受けています」
――ジュンモさんは声楽のご出身ですが、オペラの方は外国語で歌うことに日常的に慣れていらっしゃる気もします。
『オペラ座の怪人』(C) Seoul Musical Company
――昨年、日本で『レ・ミゼラブル』をご覧になったそうですが、同じく韓国出身でバルジャン役だったキム・ジュンヒョンさんから、アドバイスを受けたりはされていますか?
『レ・ミゼラブル』キム・ジュンヒョンさん演じるバルジャン(右) 写真提供:東宝演劇部
――ジュンヒョンさんが以前、在籍された劇団四季の「母音法」や「呼吸法」は、もしかしたら参考になるかもしれませんね。はじめに歌詞から子音を抜き取り、母音だけで体に入れ込むといったメソッドです。
「それは共有できる部分があるかもしれませんね」
*次ページでは、ジュンモさんの抱くバルジャン像について語っていただきます。本邦初公開の、ジュンモさんのバルジャン扮装写真も掲載!