企業経営のノウハウ/店舗経営のコツ

カリスマが分析!マクドナルド業績が回復しない理由5

なぜマクドナルドの業績は回復しないのでしょうか?生え抜き管理職や、ハイクラスの知識人、経営の達人をもってしても、回復の兆しは見えません。どうして復活が難しいのかについて、現場歴40年の「店長養成道場」のカリスマが本当の理由を語ります。

執筆者:植竹 剛

どうしてマクドナルドに客足は戻らないの?

成功する店舗経営のコツをニュースから考えてみた!

成功する店舗経営のコツを今問題が起きている店舗から考えてみました

なぜマクドナルドの業績は回復しないのでしょうか?昨年社長が交代したマクドナルドですが、経営の達人をもってしても、業績回復の兆しは見えません。今回は、現場歴40年の「店長養成道場」のカリスマガイドがマクドナルドが復活しない本当の理由を考えてみました。


その1.「商品の品質・店舗全体のサービス・清潔感」レベルの低下と24時間営業化

まず、現在のマクドナルドの店舗経営は、Q=Quality S=Service C=Cleanliness(商品の品質・店舗全体のサービス・清潔感)のバランスが完全に崩壊しています。

「完全に」とは店舗運営の最後の切り札である「人海戦術」が通用しないレベルまで課題が山積みしていることによります。「24時間営業化」になる前は、つなぎ服を着たナイトクルーがメンテナンスと掃除を行っていました。

このスタッフは、今のナイトクルーと呼ばれる人材とは異なり、閉店後から開店前までの間で様々な機器のメンテナンスや営業中にはできない清掃(クリンネス)等を行う大切な機能でした。しかし、深夜作業なので人件費も安くはなく、生産性も人によりバラツキが見られ、重要性を忘れて必要性だけが問われるようなっていきました。その後24時間営業が始まり、直接的にこの機能はなくなりました。お客様を店舗に入れない時間帯があって初めて、スタッフにはできる作業があるのに、それができなくなったことで客席フロアを筆頭にどんどん店舗が薄汚れていきます。

ガイドはこのような体験もしました。自宅近くのマクドナルドはスルー併設店です。深夜作業が終わって夜食と思い来店しました。すると、入口のドアに鍵が掛かっていて入れません。あれ?24時間営業をやめたのか?と思ったら一枚の貼り紙で「セキュリティのためスルーのみの営業です」とのこと。あまりにもあきれ返ってそのまま店舗を後にしました。

その2.60秒以内提供ルール「こちら(右or左)に寄っておまちください」という台詞で失った常連客

60秒以内に商品を提供するサービスは『「ファスト」フード』という業種では正しかったと思います。しかし、あの悪名高き「こちら(右or左)に寄っておまちください」というスタッフの言葉は、朝の時間帯に代表される「常連客」の楽しみであるアルバイトとの10秒の語らいの時間すら奪ってしまいました。常連客にとってはレジ係のアルバイトが金銭の受け渡しを行う間に他のアルバイトが商品をサービングしてくれるまでの待ち時間こそ、一日の運を決めるくらいの大切な時間だったのです。

これがズバッと分断され、病院の「次の方どうぞ」状態になってしまったのです。
例えれば車のハンドルの「遊び」部分をそぎ落としてF1カーのようにしてしまったともいえます。スピードが速いというのはいいことですが、店員さんとのコミュニケーションを楽しみにしてきていた常連客が離れていく一因となってしまいました。現在、他のファストフード企業も同じオペレーションを行っているところがありますが、これは共通して警鐘を鳴らします。

その3.「ジャンクフード業態」からの脱却が遅れた

子どもの誕生日会をマクドナルドでやっていた人もいるでしょうが、今は昔の話です。これからはどのような転換を図るかがカギのひとつになります。

マクドナルドの場合、まずは商品そのもの栄養価値の低さが問題です。摂りすぎると不健康になる可能性がある物質が多く含まれているという現実があり、「マクドナルドのハンバーガーは腐らない」という実験までネット上にアップされてしまっています。こういった不気味な仮説が成り立つことすら店舗経営にとっては致命的です。

そして原材料問題があります。これは店舗側としてはどうにもならない問題で、店舗で行うオペレーションは「揚げる」「焼く」「温める」「冷やし続ける」等の調理しかできません。

人毛などの異物混入を限りなくゼロにする努力はできても、すでに半製品化された物が消費期限切れかどうかは絶対に分からないのです。ロッテリアはギャグかと思われんばかりの商品開発(パッケージ開発)に力を入れて、モスバーガーではアレルゲンにまで言及できる路線を歩んでいます。巨艦マクドナルドはどちらに進路を執るのか、また別の道を考えるのかが興味深いところです。

その4.生え抜き店長が社長になれない人事・商魂はどこへ

諸事情があるのは承知の上で理由の一つにしました。もちろんこのような人事の形式を執る企業でもモチベーションを維持する術があるでしょう。しかし、店舗オペレーションを知ろうとした(その気持ちを出そうとした)藤田田氏。エピソードとして噂として残るのは、作業服にヘルメット姿で工事中の店舗を視察する藤田社長。現場を知る必要はあるか否かではなく、パフォーマンスも含めて現場主義をメディアへのPRとして活用していたことがありました。

ガイドが古巣ロッテリアで働いていたときに、新宿の旗艦店を建設中の折、藤田社長が現場監督に扮して敵情視察に来た、という噂が社内に広まりました。真実は定かではありませんが、これくらい藤田氏が影響力をもっていたことは確かです。トップが簡単にすげ代わる人事に明日はあるのでしょうか。マクドナルドに商魂は残っているのでしょうか。残っているとしてもどのように顕在化してくるのかがカギになります。

その5.店長が疲労困憊。現場の役割低下

今まで、マクドナルドの店長は現場で気概(本部とお客様が考える矛盾を解消しようとする気持ち)を持ち続けるだけの理由がありました。アルバイトたちの雇用を守り、現場感を大切にすることで得られる大切な情報を本部に吸い上げ、店舗マネジメントの活性化を図ることが店長の仕事だったのです。

しかし私が挙げた上記4つの理由によって、今の店長は疲労困憊なのです。事務所のイスに座ったら最後、立ち上がる気力も残っていない。お客様と店舗、店舗と本部の大事な接合役である店長。本来の役割をまっとうできないほど業務の何もかもを押し付けたら、スーパー中間管理職である店長は機能しなくなってしまいます。中間管理職が機能しない組織にいる経営トップは裸の王様でしかないといえるでしょう。

こうなってしまった飲食店が復活するためにはどうしたらいい?

いかがでしたでしょうか。実はこのような状態に陥ったお店の回復策は、店舗経営、運営は規模は関係ありません。

まずは商品の品質維持、人財を中心とした店舗のサービス力、全体の清潔感の3つは万国全店共通です。この店舗商売の鉄則を重視すれば回復のきっかけの一つになるでしょう。

そしてマクドナルドの場合は文中にも書きましたが、「今後の業態」を決めることです。個人店でも業態を決めきれず、なんとなく喫茶店なのかレストランなのか分からない飲食店も多いのですが、そういったお店はうまくいきません。

さらに言えば、経営者が店舗である現場と最終消費者(お客さま)から目をそむけないことです。2、3店舗のオーナーさんも3000億円企業の社長さんも同じです。

商売に王道あり、しかし継続に王道なし。
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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