食用可能な狩猟とは
例えばガイドラインでは、「腹部に着弾した個体は、食用に供さない」とされ、腹部に着弾しないように狙撃すること、わなで捕獲し生体で食肉処理施設へ運搬して衛生的に処理することが望ましいこと、野生鳥獣にできる限り苦痛を与えないことが望ましいことなどが示されています。また狩猟対象動物の異常確認も必要となっています。足取りがおぼつかない、神経症状がみられ、異常な挙動がある、ダニ類などの外部寄生虫が著しい、脱毛が著しいなどが具体例が挙げられ、これらが一つでもあれば、食用に供してはならないとしています。
記録の作成と保存や衛生管理
ジビエは、屋外で狩猟されるわけですから、家畜と比べると、病原菌や寄生虫のリスクも高くなります。食品取扱者の感染を防ぐため、処理施設までの搬入(場合によっては冷やして搬入)、服装(血液や内臓物に触れないように)、衛生的な処理方法や注意点等も細かく示されています。食中毒が発生した場合に、早期に問題の食品を特定し対応できるように、狩猟から食肉処理、販売に至るまでの各プロセスで記録の作成と保存を行うこと、またHACCPに基づく衛生管理を行うことが奨励されています。
ジビエは、生食は禁物
飲食店営業者がジビエを仕入れて提供、あるいは加工品を作る場合などは、食肉処理業の許可施設で解体されたものを仕入れること、とあります。また食べる段階での注意点としては、ジビエ(内臓を含む)を、生で、あるいは加熱が十分ではない状態で食べると、E型肝炎や腸管出血性大腸菌症の食中毒、また寄生虫の感染のリスクがあることも報告されています。特に妊婦やこども、高齢者などは、深刻な症状になると見られ、控えるように注意してください。
ジビエは中心部温度が75℃度になるまで火が通るようしっかり加熱(1分間以上)しましょう。また、調理器具の消毒、また調理用と食用の皿、箸を区別するなど、混ざらないように十分に注意しましょう。
適切な加熱処理をすれば、特別神経質になる必要はないのですが、まだまだジビエは、自家消費するケースもあるようですから、「生やたたきがおいしい」という習慣を優先することのないように、私たち消費者も理解しておきましょう。
このような内容を読んでいくと、やはり人の手で管理された家畜とは異なり、安全確保のためには、様々なプロセスで関わる人たちの認識と、確実な実践が必要であるということが理解できます。
またジビエに限らず、豚レバーの一部にもE型肝炎ウイルスの遺伝子が検出されており、食品リスクはゼロではないこと、そしてだからこそ食品取扱者や消費者である私たちも、それぞれの立場でできるだけゼロに近づける努力が必要なのだということを改めて思いました。
シカ肉やイノシシ肉に含まれる栄養成分のことや、農作物への被害やその背景などについては、過去の記事もご参考にお読みください。
関連リンク/
・アスリートにおススメ! シカ肉の栄養成分とは(食と健康)
・機能性成分が豊富なジビエ(食と健康)
・ヘルシーなシカ肉の魅力と調理法(食と健康)
参考/
・野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)(厚生労働省)
・ジビエを介した人獣共通感染症ファクトシート (食品安全委員会)
・野生鳥獣の病原体保有状況調査の結果について(厚生労働省)
・4.シカ肉、イノシシ肉の衛生実態調査結果(農林水産省)
その他