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クリスマスに聴きたいしっとりジャズベスト3選(3ページ目)

クリスマスソングは、一年の中でこの十二月にしか聴くことができない音楽です。それだけに印象は強く、クリスマスソングが流れてくるだけで、楽しく、暖かい気持ちになってしまいます。今回は、しっとりとジャズによって演奏されたクリスマスソングをご紹介します。

大須賀 進

執筆者:大須賀 進

ジャズガイド

マイケル・ブーブレ「コール・ミー・イレスポンシブル・Tour Edition」より「ホワイト・クリスマス」

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「現代のフランク・シナトラ」と言うキャッチ・フレーズに表わされているように、カナダ出身のマイケル・ブーブレは期待の本格派ジャズシンガーです。カナダ出身とは言え、母方がイタリア系のため、同じくイタリア系の「シナトラ二世」の資格も十分。

そのマイケルが、シナトラよりさらに前の時代の偉大な先輩に挑んだのがこの「ホワイト・クリスマス」です。その先輩の名は、ビング・クロスビー。

「ホワイト・クリスマス」はビング・クロスビーの最大のヒット曲として知られています。この曲は、アメリカはもちろん、全世界的にスタンダード化している、知らない人はいないクリスマス・ソングです。
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アメリカの国民的作曲家のアーヴィング・バーリンによるこの曲は、1942年の映画「スイングホテル」でビングにより歌われました。そのまま映画版の歌で大ヒットし、同じビングにより1947年にほぼ同アレンジで再録され、そのヴァージョンにより世界的に有名になりました。

誰もが知っているその定番中の定番に、若き帝王を目指すマイケル・ブーブレは、実は相当ビングの歌唱を聴きこんで臨んだように感じられます。それは、二コーラス目に顕著に現れます。

有名な出だしの「アーイム・ドリーミング・オブ・マイ・ハート・クリスマス」のドリーミングの部分(二小節目頭の音)に注目です。映画版ビングは二小節目頭のファの音をトリルして歌っています。(トリルとは、音をすばやく上下させるテクニックで、歌で使えば、コブシのような雰囲気が出ます。これを楽器で多用するのが前述したサックス奏者のケニーG)

そのビングの節回しは非常に特徴的で、鼻歌のような軽快な感じを醸し出し、クルーナーとしての真骨頂でもあります。それが、ビング自身1947年の再演ではなぜかトリルをしていません。そして一般的にはトリル無しのヴァージョンの方が有名になっています。

そしてこのドリーミング・トリルとでも呼びたい歌い方は、実に強烈な印象を残すのです。おそらくは映画を見たであろう年代のヴォーカルに影響を及ぼし、この曲を吹き込んだ多くの歌手に、そのトリルの兆候が見られることになりました。

代表的なところでは、ジャズ界のファースト・レディ、エラ・フィッツジェラルドが1960年に入れたクリスマスアルバムで披露。また、ポップスの世界でも、「砂に書いたラブレター」で有名なパット・ブーンなどが、このドリーミング・トリルを用いて歌っています。

そして、今回この若きマイケル・ブーブレも、2コーラス目にこのドリーミング・トリルを使っているのです。さりげなく、どことなく恥ずかしげに使うマイケルには、好感が持てます。

このマイケルのヴァージョンは、2007年に出た三枚目のアルバム「コール・ミー・イレスポンシブル」のツアー・エディションという特別版によってしか聴くことができません。現在では、やや入手が難しいようですが、いずれ再発されたら、ぜひ聴いてみることをおススメします。

マイケルはこの後、2012年にクリスマス・アルバム「クリスマス」にもこの曲を取り上げ、女性ヴォーカルとのデュエットを聴かせてくれます。

こちらは、現在でも入手がしやすく、演奏の方は最初の表現とは違い、尊敬するシナトラ寄りか、もっと時代が下ってエルヴィス・プレスリーのような感じで歌っています。これはこれでよいのですが、やはり最初のビング・クロスビーをリスペクトした歌唱のほうに惹かれます。

マイケルの良いところは、古い新しさ。温故知新の言葉の通りに、スタンダードな良いものが、時代を越え聴く者の心に届く事を証明しているかのようです。

クリスマスに聴きたいしっとりジャズ、いかがでしたか?クリスマスとともに、今年の一年を振り返ってみるのも良いかもしれません。それでは、また次回お会いしましょう!
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