マイケル・ブーブレ「コール・ミー・イレスポンシブル・Tour Edition」より「ホワイト・クリスマス」

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「現代のフランク・シナトラ」と言うキャッチ・フレーズに表わされているように、カナダ出身のマイケル・ブーブレは期待の本格派ジャズシンガーです。カナダ出身とは言え、母方がイタリア系のため、同じくイタリア系の「シナトラ二世」の資格も十分。

そのマイケルが、シナトラよりさらに前の時代の偉大な先輩に挑んだのがこの「ホワイト・クリスマス」です。その先輩の名は、ビング・クロスビー。

「ホワイト・クリスマス」はビング・クロスビーの最大のヒット曲として知られています。この曲は、アメリカはもちろん、全世界的にスタンダード化している、知らない人はいないクリスマス・ソングです。
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アメリカの国民的作曲家のアーヴィング・バーリンによるこの曲は、1942年の映画「スイングホテル」でビングにより歌われました。そのまま映画版の歌で大ヒットし、同じビングにより1947年にほぼ同アレンジで再録され、そのヴァージョンにより世界的に有名になりました。

誰もが知っているその定番中の定番に、若き帝王を目指すマイケル・ブーブレは、実は相当ビングの歌唱を聴きこんで臨んだように感じられます。それは、二コーラス目に顕著に現れます。

有名な出だしの「アーイム・ドリーミング・オブ・マイ・ハート・クリスマス」のドリーミングの部分(二小節目頭の音)に注目です。映画版ビングは二小節目頭のファの音をトリルして歌っています。(トリルとは、音をすばやく上下させるテクニックで、歌で使えば、コブシのような雰囲気が出ます。これを楽器で多用するのが前述したサックス奏者のケニーG)

そのビングの節回しは非常に特徴的で、鼻歌のような軽快な感じを醸し出し、クルーナーとしての真骨頂でもあります。それが、ビング自身1947年の再演ではなぜかトリルをしていません。そして一般的にはトリル無しのヴァージョンの方が有名になっています。

そしてこのドリーミング・トリルとでも呼びたい歌い方は、実に強烈な印象を残すのです。おそらくは映画を見たであろう年代のヴォーカルに影響を及ぼし、この曲を吹き込んだ多くの歌手に、そのトリルの兆候が見られることになりました。

代表的なところでは、ジャズ界のファースト・レディ、エラ・フィッツジェラルドが1960年に入れたクリスマスアルバムで披露。また、ポップスの世界でも、「砂に書いたラブレター」で有名なパット・ブーンなどが、このドリーミング・トリルを用いて歌っています。

そして、今回この若きマイケル・ブーブレも、2コーラス目にこのドリーミング・トリルを使っているのです。さりげなく、どことなく恥ずかしげに使うマイケルには、好感が持てます。

このマイケルのヴァージョンは、2007年に出た三枚目のアルバム「コール・ミー・イレスポンシブル」のツアー・エディションという特別版によってしか聴くことができません。現在では、やや入手が難しいようですが、いずれ再発されたら、ぜひ聴いてみることをおススメします。

マイケルはこの後、2012年にクリスマス・アルバム「クリスマス」にもこの曲を取り上げ、女性ヴォーカルとのデュエットを聴かせてくれます。

こちらは、現在でも入手がしやすく、演奏の方は最初の表現とは違い、尊敬するシナトラ寄りか、もっと時代が下ってエルヴィス・プレスリーのような感じで歌っています。これはこれでよいのですが、やはり最初のビング・クロスビーをリスペクトした歌唱のほうに惹かれます。

マイケルの良いところは、古い新しさ。温故知新の言葉の通りに、スタンダードな良いものが、時代を越え聴く者の心に届く事を証明しているかのようです。

クリスマスに聴きたいしっとりジャズ、いかがでしたか?クリスマスとともに、今年の一年を振り返ってみるのも良いかもしれません。それでは、また次回お会いしましょう!

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