日本語もたくさん指摘され、厳しい世界だと実感

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準備学院でのメモリー、ST用資料(左は日本語、右は韓国語)。主に社説が多かったそう。

(ガイド)通訳の勉強を始めて、どうでしたか?

(Kさん)通っていた語学学校では韓国語ネイティブの先生と日本語ネイティブの先生が交代で授業を行いますが、日本語ネイティブの嵯峨山みな子先生(「憧れの仕事~通訳者・嵯峨山みな子さん」(All About 韓国語))の授業では衝撃を受けました。「自分は日本人だから日本語は大丈夫だろう」と思っていたら、日本語もたくさん指摘されたんです。ただぼんやりしゃべっているだけではだめだな、厳しい世界だなと思いました。周囲には韓国語も日本語も上手な生徒さんもいたのでとても刺激を受けました。授業に通うまではパク・クネ大統領の演説なんて聞いたことありませんでしたが、授業で触れながら、こういう文章を完璧に訳せたら素晴らしいなと思いました。先生がいろんな訳のヒントを出してくれると、日本語も奥が深いということを実感しましたし、他の生徒さんの訳を聞いていても勉強になりました。

授業の中で特に効果を感じたのは文章のシャドウウィングや、韓国語のヒアリングです。また、メモの取りかたを見てくださったり、先生がご自分で使っている記号を紹介してくれたりしました。先生がどんな記号を使っているかは、その後通った韓国の学院でもなかなか聞けない話だったので、ノートテイキングの技術を先生から直接聞けたのは収穫になりました。

出版社に就職するか通訳者を目指して進学するか悩んでいましたが、クラスメイトには年上の方々もいて、「20代は何をしてもいいのよ!」と後押ししてくれて、通訳翻訳大学院への進学を目指すことにしました。

実は、大学に延長生として在学しているとき、韓国外国語大学(外大)の通訳翻訳大学院の受験にチャレンジしたんです。外大は一次が筆記試験だけだったので、面接や通訳の口頭試験を受けずに済むというだけの理由です(笑)。当然のことながら準備不足で落ちました。受験対策を立てるのは必須だと思い、大学を卒業したら、大学院受験の秋まで韓国で入試準備学院に通うことにしました。通訳翻訳大学院に入るための入試準備学院があるということは、語学学校のスタッフの方から教えていただいていました。

「その発音なら、どこも受からない」と言われた

(ガイド)入試準備学院のお話を聞かせてください

(Kさん)ソウルにあるFJ語学院に通いました。平日に梨花女子大学校の対策コースを、そして土曜日に韓国外国語大学校の対策コースを選択しました。中にはスパルタな先生もいらっしゃって、クラスに入ったとき、「あなたみたいな発音ならどこを受けても受からない」と言われました。「授業を録音して、家で発音練習してきなさい」と指示され、たくさん練習し、次回の授業で発表すると「練習したか」と聞かれ「しました」と答えると、「結果が出ていない。これなら練習してないも同然だ」とも言われたりしました。他の先生には「発音よりもまず、あなたは自信をつけるところから始めなさい」とアドバイスされました。優しい先生が多かったので、ときにはスパルタな先生に‘締めて’もらえたのも良かったと思います。「あなたは発音が悪いから通訳学科は厳しいのでは。ほかの科を受験したら?」と言われたこともありますが、学生一人ひとりにアドバイスをしてくれるのはありがたいと思いました。

所属したクラスは、梨花女子大コースも外大コースも一クラス平均20~30人でした。日本語ネイティブの割合は、梨花女子大コースがクラスに3,4人。外大コースはクラスに一人、すなわち私しかいませんでした。

梨花女子大を受験するか、外大を受験するか悩みましたが、外大の説明会で「日本語ネイティブは、一学年平均1~1.5人」と聞き、合格する可能性が低いと感じましたし、梨花女子大は日本語ネイティブを対象にした高級韓国語の授業もあると聞いて、梨花女子大の方が日本人向けの環境が整っているのかなと思い受験することに決めました。日本でお世話になった先生方が梨花女子大の卒業生であったことや、説明会やキャンパスの雰囲気を見て自分に合っていると感じたのも理由です。

授業では入試に必要なメモリー(文章の記憶)の練習をしました。まず先生がA4用紙半分ほどの社説を読みます。原稿はありません。その内容を記憶して、要約するんです。「言いたいことは何ですか?」と聞かれたりと、とにかく文章の核を捉える訓練をしました。学院に通って2年目の方などは一段落丸暗記できる方もいて驚きました。それから、ST(サイトトランスレーション:文章を目で追いながら訳していく)の練習もしました。社説などの原稿が配られ、ひと段落ずつ当てられ、訳を出していきます。「直訳すぎる」と指摘されたり、「次の人、同じところを訳してみて」となるときもありました。漢字テストもありました。勉強していかないと日本人でもバツだらけになるので、恥ずかしいので勉強しました。梨花女子大は筆記テストはありませんが、学院では書く練習もしていました。

自習はカフェで行いました。住まいのコシウォン(고시원[孝試院]:主に受験生用の、比較的狭くて安価な集合居住施設)があまりにも居心地が悪くて……。壁が薄く、隣の部屋の人のため息や独り言も聞こえるほど。学院の勉強は声を出さないといけないので、コシウォンではできませんでした。韓国のカフェは長居ができて、声も出せるし、勉強している人も多いから居心地が良いんです。コーヒー代が高いのが難点でしたが(笑)。クラスメイトとのスタディーもカフェで行いました。試験直前になったら梨花女子大に通っているオンニ(先輩、お姉さん)に連れて行ってもらい、梨花女子大のキャンパス内で練習したりもしました。環境に慣れるのが大切と聞いたからです。

梨花女子大のコースは、一カ月に一回、模擬試験を行ってくれるんです。発音が正しいか、表現が適切か、落ち着いているか、論理的に話せるかなどの評価項目がありました。とてもためになりました。