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2015年度の年金額には初めてマクロ経済スライドが適用されました。マクロ経済スライドと年金額計算の関係をみていきます

年金の支給額は物価や賃金の変動に伴って見直されるしくみですが、今年度の年金額改定には初めて給付水準を調整するマクロ経済スライドが実施され、これまでとは少し異なる方法で支給額が決定されました。マクロ経済スライドによる年金額改定のしくみも含めて、今年度の年金額について事例を交えてみていきましょう。

<INDEX>
公的年金の年金額改定のしくみ
2015年度の年金額の計算のしくみ(国民年金)
2015年度の年金額の計算のしくみ(厚生年金)
事例で比較~老齢厚生年金の本来水準と従前額保障の年金額
国民年金と国民年金基金

公的年金の年金額改定のしくみ

はじめに、年金額改定のしくみをみてみましょう。年金の支給額は物価の変動に伴って支給額を見直す物価スライド制が導入されています。物価スライド制が導入されてから毎年度物価は上昇していたため、年金額も増額されていましたが、2000年度から2002年度にかけて物価が下落したとき、年金額の引き下げが見送られました。その後もデフレ状態が続いたため、年金の支給水準は本来の水準よりも高いまま推移してきました。

このような年金の支給水準は「特例水準」と呼ばれ、本来水準の年金額よりも高い支給水準のままとなっていましたが、2012年の法改正で特例水準を解消する制度が導入され、2013年10月から2015年4月にかけて解消するための年金額の引き下げが行われてきました。具体的には、2012年時点で年金の支給水準は本来よりも2.5%高い状態でしたが、2013年10月に▲1.0%、2014年4月に▲1.0%、2015年4月に▲0.5%の引き下げが実施され、特例水準は解消されました。
年金額の推移

(厚生労働省ホームページより、クリックすると拡大します)

2015年度以降は、特例水準が解消されて、基本的には本来水準の年金が支給されますが、上図のように2015年度の年金額は2014年度の年金額に比べて+0.9%となっています。

本来水準の年金額の計算方法は、2004年の法改正で導入され、原則、新規裁定者(68歳到達年度前の新規裁定者)は賃金水準の変動率、既裁定者(68歳到達年度以後の既裁定者)は物価の変動率に伴って年金額が見直されます。ただし、物価の変動率が賃金水準の変動率を上回る場合は、既裁定者も賃金水準の変動率に伴って年金額が見直されます。2015年度の年金額改定に用いる賃金水準の変動率は+2.3%、物価の変動率は+2.7%なので、新規裁定者・既裁定者とも賃金水準の変動率に基づいて年金額が見直されます。

さらに、2015年度は年金額の計算にマクロ経済スライドが適用されます。マクロ経済スライドは2004年の法改正で、少子高齢化が進む中、年金制度の安定と維持を目的に年金の給付水準を自動的に調整するしくみとして導入されました。賦課方式をとっている公的年金制度において、少子高齢化への対応であるマクロ経済スライドは、将来の年金の受給者である現役世代の給付水準を確保することにつながるしくみです。具体的には、賃金水準もしくは物価水準の変動をそのまま年金額に反映させるのではなく、保険料を負担する現役世代の人口の減少と平均余命の伸びによる高齢化も併せて年金額に反映させて支給額を決定します(マクロ経済スライドの詳細は「将来の給付水準?マクロ経済スライドって?」をご覧ください)。
物価および賃金が上昇した場合のマクロ経済

(日本年金機構ホームページより)

制度が導入されたのは10年以上前ですが、マクロ経済スライドが適用される条件として年金額の特例水準が解消されることが必要でした。このため、特例水準が解消された2015年度の年金額改定で初めて適用されることになりました。マクロ経済スライドが適用されると、スライド調整率が年金額の改定率からマイナスされます。2015年度のスライド調整率は、公的年金全体の被保険者の減少率(▲0.6%)に平均余命の伸びを勘案した一定率(▲0.3%)を合わせた▲0.9%です。2015年度の年金額は、マクロ経済スライドが適用された額になります。

それでは次に、具体的な年金額がどうなるのかみていきましょう。