赤ちゃんは年金の救世主?少子高齢化時代に生まれたマクロ経済スライドを検証します!
2006年の合計特殊出生率(一人の女性が生涯に産む子どもの数の推計値)は6年ぶりに上昇し、1.32(前年比+0.06)になりました。景気が回復し、雇用状況が好転したことが、若い世代の結婚や出産を後押ししているとみられています。公的年金制度にとっても、少子化の改善は歓迎すべきことです。

今回は、公的年金制度がどの程度の経済状況や出生率を前提に給付水準を試算しているのか、また、今後の給付水準はどうなるのか、さらに、給付水準を抑制する仕組みである「マクロ経済スライド」でどのように変わるのか、最近の動向を踏まえてみていきましょう。
 

なぜ困る?少子高齢化


日本の公的年金制度は、現役世代が納める保険料で高齢者世代の年金を支える「世代間扶養」という考え方が基本となっています。昔は家族単位で行ってきた「子どもが親の面倒をみる」扶養関係を社会全体で行おうと、昭和36年に国民全員が参加する公的年金制度が始まりました。

その当時、出生率は2.00程であり、更に平均寿命は男性が約65歳、女性が約70歳でした。出生率も平均寿命も現在とはずいぶん異なる水準です(平成17年の平均寿命は男性78.53歳、女性85.49歳)。子どもの誕生で人口が増加し、平均寿命が男女とも現在より15年以上短かった時代にできた「世代間扶養の制度」を維持し続けることは、現在では厳しい状況となっています。

日本の少子高齢化は、世界でも例を見ない速さで進みましたが、出生率の低下や高齢化率(65歳以上の高齢者人口が総人口に占める割合)の伸びは、すでに1970年代から見え始めていました。1994年には、高齢化率が「高齢社会」といわれる14%を超え、10年後の2004年には19.5%、2005年には初めて20%に達しています。

公的年金制度も、こうした状況に対応するための改正が幾度も実施され、老齢厚生年金の支給開始年齢の引き上げや保険料の引き上げなどによって、「世代間扶養」を維持してきました。

年金法改正時には、年金の給付水準を決定するため、具体的なモデル(「モデル世帯」といいます)を決めて年金額を計算し検証します。現在のモデル世帯は、夫婦2人の世帯で、「夫は会社員で40年間厚生年金に加入し、妻は専業主婦で40年間国民年金に加入した夫婦」という設定です。

また、年金の給付水準とは、現役世代の男性の平均賃金に対する年金額の割合を表した数値です。使用する平均賃金は、収入から税金や社会保険料を差し引いた手取り賃金とされています。モデル世帯の年金額は、以下の図の通りです。
 

このモデル世帯の年金額は、現役男性の手取り平均賃金の59%強(約6割)にあたります。

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