ステキな番組「大科学実験」
ガイド:2010年から放映されたNHK Eテレの『大科学実験』のタイトル音楽をされたり、松前さんはNHKと相性がいいみたいですね(笑)。ナレーションは細野晴臣さん! こういうテーマの時は、どういう風に曲を作って行くのですか? やっぱり、“科学的”な感じを出そうとか?
松前:
そうですね。この曲は最初にイメージのリクエストはあったんですが、80年代ニューウェイヴ的なものを自分なりに解釈して「科学」「実験」がテーマで、画面があったので、あまり「子供っぽい」ものではなく「クール」に。EMSのボコーダーを使っていますね。実験の内容とか細野晴臣さんのナレーションも、とてもステキですよね。
海外でテレビ放送の賞もたくさんとった番組なんです。こんなステキな番組の音楽が担当できて、とても光栄です。 そうNHKのもの多いですね。6年生の理科の番組「ふしぎ情報局」、もう変わりましたが「すくすく子育て」「まいにちスクスク」のテーマ曲などもありました。
エキスポはまだ活動してますか?
ガイド:2011年には、テレビアニメ化された「キルミーベイベー」を手がけられました。声優のやすなとソーニャ(赤崎千夏さん、田村睦心さん)が歌ったタイトル曲は、山口優さんとエキスポのクレジット(作曲・編曲)となっています。特に出だしの所が、変…凄くエキスポだなぁーと、改めて感じます。これはエキスポとしては久しぶりのお仕事になるんでしょうか? また、エキスポとしてやろうとした理由とかあれば、教えて下さい。
松前:
はい、担当のポニーキャニオンの音楽プロデューサーが、昔から「もすけさん」や「エキスポ」のファンだったらしくて「エキスポはまだ活動してますか?」みたいな問い合わせが事務所にあったんです。もうびっくりしましたよ。それでアニメの音楽という事だったんですが。なんかいろんな事がうまくハマって、おもしろい作品になりましたね。
オープニング曲はまず僕が大阪で骨格みたいなものを作って、その時点でイントロとA部分のサビのリズム(変拍子)はできあがってました。そのデータを元に山口がBパートやサビの音程、オオサビなどを作って、最後に東京で細かい所を二人でつめていきました。ひさしぶりにしっかり共作した感じですね。でも実はエキスポで「歌もの」ははじめてなんですよ。山口は「もすけさん」で、僕は「コンスタンスタワーズ」でそれぞれ歌ものやってましたからね。
今回はアーティスト名としては声優の二人だから、作曲チームという形でエキスポによる歌モノが実現しました。ギターとドラムは生演奏にしたいと思って、ギターは今堀恒雄さん、ドラムは佐野康夫さんに演奏してもらいました。
キルミーのベイベー! (YouTube)
ガイド:
豪華なメンツですね~。
エンディングテーマ曲も、とってもクセになるダンスミュージックですね。アニメソングとして成り立っているけど、オリエンタル的なアレンジとか、遊び心が隠し味のように詰め込まれていて、大人が聴いても楽しいです。遊びすぎて、クライアントからダメ出しされる事とかないのですか?
ふたりのきもちのほんとのひみつ (YouTube)
松前:
オープニング曲同様、こちらもまずは僕が土台になるものを作る事になってスタートしたんですが、どんどん曲のイメージができていっちゃって気がついたらほとんど完成しちゃっていたんです。歌詞も仮でつけていたんだけど、「1.2.3.」「4.5.6.」「好きよあなたが殺したいほど」などの歌詞はそのまま採用されました。
結果的に作曲は松前名義になってるんですが、アレンジはエキスポらしさも出る形で二人でやっています。鼓や琴の音は、オープニングがロシア民謡っぽいイメージがあるのの対比で、考えてみたんですが、ちょうどキルミーダンスの動きにあう形になりましたね。琴の音もわざと「打ち込みクサイ」音、データにしていますよ。遊びすぎ、やりすぎっていうのはエキスポや僕のソロでも常に考えるテーマですね。もちろんバランスを考えてやっているつもりだけど、その「バランス」のラインはかなりやりすぎ側にあるのかもしれないですね。
ただプロデューサーはそういうエキスポの特徴も好きでいてくれたので、全く問題なかったんですが。そういえばニコ動とかのコメントをみたら、オープニングがポリシックス、エンディングが電気グルーヴに似てるって書かれたりしてたんだけど、どの曲とかはわからないけど、そもそも彼らと同じ様な70~80年代の音楽が好きだった訳だから影響を受けたものが近いっていう事なんでしょうね。
ガイド:
ふ、ふ、ふ(笑)…放送が終了した後も、根強い人気が続いていましたね。
松前:
ありがたい限りです。放送が終わってしばらくしてから、OP曲、ED曲、それぞれのリミックス、キャラクターソングなどの歌モノだけを集めたベスト盤みたいなものが出たのですが、これにアニメの新作DVDも付属したり。ここでボーナストラックにOP曲のライヴバージョンを収録しました。実際には生演奏のオーディオを編集しなおして、打ち込みの音も演奏してデータを作りなおして録音しなおしてオケを作って、ボーカルの二人にスタジオでライヴ風に唄ってもらいました。観客の声もスタッフの男連中が集まって録音したり、僕は自宅で一人で拍手と歓声100回重ねて入れたりしました。
ベストアルバムCD キルミーベイベー・スーパー (amazon.co.jp)