『星空からのメッセージ展』での展示。
おおはた雄一さん、栗コーダーカルテット3/4、
芳垣安洋さん、伊賀航さんと、芸達者なミュージシャン陣
——もともと音楽からイメージが湧くタイプ?そうですね。脚本を書く時はまず曲を選び、ずっとその曲を流しながら書きますね。色合いを曲で決めると言うか。
——今回のミュージシャンは、シンガーソングライターのおおはた雄一さん、テレビ『ピタゴラスイッチ』(NHK)でお馴染みの栗コーダーカルテット3/4、打楽器奏者の芳垣安洋さん、ベーシスト伊賀航さんと、変わっても即対応してくださいそうな、芸達者な方ばかり。
そうなんです。私がやりたいことは、このメンバーじゃないとできない。ライブ感を読んで、即興ができる人でないと無理ですね。
——ミュージシャンの方達が、すったもんだすることはない?
していますよ。栗コーダーの方達はすごく難しい、でも、だから面白いと言っていらっしゃいました。物語と合うと思っていた音楽が実際にはやってみると合わなかったり、意外な組み合わせがうまくいったり。
言葉を聴かせるための楽器編成も難しいところです。笛3本が良いのか、太鼓やチューバを入れるのか。同じ曲でも楽器によって全然異なりますから、リハーサルには時間がかかります。それなのに、お客さんの空気によってはいきなり「やめましょう!」となったりするので、「あんなにリハしたのにやらないの?」って(笑)。でもミュージシャンの方達は、この空気ならそうなるよねってわかってくれますね。
——ライブならではのスリリングな臨場感が味わえそう。そして、本の朗読はどんな形ですか?
昨年、プラネタリウムの演出と「星空からのメッセージ」展をやって、2万5千人もの方が来てくださいました。そこで書かれている物語は本にならないのですか?と言われて、このたび本にしました。その中の話と音楽と合わせて、耳で聴く映画、プラネタリウムみたいなものをやりたいな、と。
また小さなお話もあります。海の音が聞こえる貝殻を男の子が町へ持って帰ったら、貝が海の音を忘れてしまった…。誰しも、今までできていたことが急にできなくなる瞬間ってあるじゃないですか。そんなことを重ねてもらえる、大人の絵本みたいな物語です。これに音楽をつけて朗読します。ここでもミュージシャンがお客さんを見ながら曲を決めるんです。すると私はその曲に引っ張られて、読み方も変わる。そんな変化を楽しんでいただけたら。
個展を手掛けて以来、私の面白い面ではなく、心の中のことや真面目な部分に共感してくれる人が多くて、そういう方達に向けて恥ずかしがらずにやっていきたいです。恥ずかしいんですが、本当のことって。
いい話の前に漫談でちょっと暖める。いきなりいい話を
するのは、こっぱずかしいんですよ
——まさに言葉と音楽のセッションですね。そして気になる漫談とは?おおはた君にギターを弾いてもらって、私が漫談します(笑)。自分の失敗談を『生きるコント』という本に書いているのですが、そのライブバージョン。おおはた君が作った「おだやかな暮らし」という名曲があり、サビが“欲しいのはおだやかな暮らし”という、日々を丁寧に生きていこうという素敵な内容なのですけど、それを、酒に酔ってすぐ記憶をなくす私はやっぱり欲しいのはおだやかな暮らし。だから、漫談に使わせてもらっています。「また、“おだやかな暮らし漫談”を聞きたいです」と言われて、おおはた君はすごくショックを受けていました(笑)。
——ちゃんと笑いもあるのですね。
関西人なので、感動だけでは物足りない。いい話の前にちょっと暖める感じです。いきなりいい話をするのは、こっぱずかしいんですよ。
——ええ?人前でのパフォーマンスはお得意かと思っていました。
いやいや、とても緊張するんです。本番前にあまりにもピリピリしているので、共演の皆が「そんな緊張するなら、やらなきゃいいじゃん」(笑)。でもステージに上がるとお客さんが温かいから大丈夫。ライブって、会場との一体感がいいんですよね。観客の皆さんの気持ちが伝わってくる。そして終わった後の爽快感や満足感は、何物にも代え難い。
——今まで開催したライブで、この言葉はお客さんの心に残ったなと実感したことはありますか。
「続く続く 道は続く 誰の物でもない ならば行こうじゃないか この道を」という一節があり、サラリーマンの方からとても勇気づけられたと言われました。
また「それは恋ですか それは愛ですか 恋は求めるもの 愛は求めないもの その人が好きなら その人に合わせなくていい。ぶれない自分と対等に向き合うといい。あなたを、ありのままのあなたを、愛してくれる人がいい。あなたの弱いところまで愛してくれる人が」という話で、泣き崩れたとおっしゃった方もいましたね。