新築マンションの契約率、リーマンショック後の水準に
安倍政権が解散総選挙を選択。引き金となったのは「7-9月GDP(国内総生産)」である。前年比マイナス1.6%は予想外の結果だった。2015年10月に予定されていた消費再増税は延期。その内容や時期が次の衆議院選の争点のひとつになるだろう。じつは、同日不動産経済研究所が発表したデータも不動産業界関係者にとっては衝撃的なものだったのではないだろうか。10月度首都圏新築マンション契約率は63.3%。好不調ライン(70%)を大きく下回った。じつにリーマンショック後(2009年2月61.7%)以来の落ち込みである。
かねてより価格上昇が懸念されてはいた。7、8月平均単価が77万円/平米を突破。ミニバブル時最高値が同71.8万円/平米(2008年7月)であったことを考えると相当な高水準。だが10月に限っていえば、平均価格は63.8万円/平米まで戻り、販売戸数も3,125戸(昨対約11%減)と決して多くはなかった。にもかかわらず売れ行きは振るわなかった。全体景況感のムードが要因か、それともやはり増税が効いているのか、そのいずれもが重なった結果なのか。
旺盛なアジアの需要、好調プロジェクトも散見
とはいえ、悲観的な声は多くない。先日行われた三井不動産グループ記者懇親会では「住宅は相変わらず安定した需要がある。懸念は建築費高騰だ」(菰田社長)と現時点の販売動向は意に介さないコメント。日経新聞夕刊では「アジア富裕層、都心マンションを買う」(11月27日)と大きく取り上げられた。海外需要も一時の傾向ではなく、一定のニーズとしてとらえる必要があるようだ。好調現場のニュースも発信されている。三菱地所レジデンスは「ザ・パークハウス品川荏原町」、「ザ・パークハウス東銀座」を2週連続で即日完売させた。「ザ・パークハウス品川荏原町」は平均坪単価にして@320万円前半。駅1分であることを考慮すれば、「明らかに高値」という印象は受けない。
ここにきて調整がなされ、「検討しやすい水準に戻りつつある」という表現が適切かもしれない。そもそもデベロッパーは(もちろん仕入れ段階から相場を見ながら事業を進めていくのだが)、最終的な正式価格は登録受付直前に決める。変化のスピードを増した市場の動きに臨機応変に対応するためである。したがって、現状(2014年後半)のような浮き沈みの激しい環境下においても短期完売に導くことができる。
一層複雑化しそうな2015年
不動産は「個」の見極めが重要。それが一層求められる市場環境である。要素は明らかに複雑化している。例えば金融緩和は為替に多大なる影響を与える。円安進行は海外から「東京の不動産は割安」を抱かせた主たる要因。したがって新政権の経済対策は、その対象となりやすい地域や物件にとっては関心を高く持って見守らざるを得ない。もちろん金利もチェックが必要だ。日銀による国債大量購入は住宅ローンの金利水準(10年国債利回り)と連動。金利が少しでも上振れすれば、先高観を助長し、一時的に駆け込み需要が発生する恐れがある。
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