Elbow Chair(エルボーチェア)という演目の一脚
【ミニ名作椅子を作る】ElbowChair エルボーチェア(2)では、旋盤や成型治具(じぐ)を使って椅子を構成する各部品を作るための部材を作りました。成型治具である「型(かた)」があるので、部品の量産が可能です。
ですから、Elbow Chair(エルボーチェア)は一見、一脚一脚手作りのように見えますが、量産するためのデザイン、つまりプロダクトデザインなのです。もっとも、組立や調整、仕上げは人の手で行うハンドメイドです、がね。
こうして製作した椅子の各部材は、肘、貫(ぬき)、座、前脚、後脚の計10個。
ここまでの「部材」作りは、椅子の完成までの下地作り、いわば舞台裏です。まだいずれも「部材」であって「部品」ではありません。
部材という舞台裏の準備を終えたところ、これから部材を加工して部品という役者を一人、いやひとつずつ製作していきます。
各部品が勢揃いし、Elbow Chair という演目の一脚の椅子が出来上がるのです。
Elbow Chairの要、「貫(ぬき)」を作る
まずは、Elbow Chair(エルボーチェア)の貫(ぬき)をつくります。椅子の貫は、椅子に座って前後左右に揺すったり、力を加えたとき椅子が変形、破損を防ぐ椅子の要(かなめ)です。
通常四本脚の椅子の場合、前脚同士、後脚同士をつなぐ前後の貫2本、前脚後脚をつなぐ左右の貫2本、計4本の貫となりますが、Elbow Chairは、それらが一体となるひとつの貫。加えて座面を受け支持する貫です。ハンス・ウェグナーの数ある名作椅子の中でも非常に珍しいタイプなのです。
貫は前後左右4つの部材を貼り合わせてひとつの部品にします。
各部材の摺り合わせ、それらを正確に固める(貼り合わせる)必要があります。この貫が正確なものでなければ前後の脚の連結、座面の固定が正確にできません。
次のページで貫の治具を製作します。