ミュージカル/注目のミュージカルレビュー・開幕レポート

名作『タイタニック』鈴木綜馬&藤岡正明撮影レポ(4ページ目)

ついに待ち望んだ作品が(拍手)!『ナイン』『ファントム』などで知られるモーリー・イェストンの名作ミュージカル『タイタニック』が、気鋭の若手演出家トム・サザーランドの新演出により、7年ぶりに還ってきます。鈴木綜馬さんと藤岡正明さんのビジュアル撮影現場にお邪魔し、その様子をレポ&ご本人達にお話を伺いました。オーディションのことや、懐かしい7年前のお話も!

三浦 真紀

執筆者:三浦 真紀

ミュージカルガイド


労働者としての不満や悔しさ、地元で待つ恋人への思い。
船底で働く機関士バレットが命の間際でどう行動するのか


■撮影レポ&インタビュー~藤岡正明さん
藤岡さんは機関士バレット役。ボイラー室で石炭にまみれて働く男です。撮影時は顔に汚しを入れて、すっかりガテン系に。船底で汗びっしょりになり働いている姿が思い浮かびます。ガテン系かと思いきや、バレットの歌うナンバーは、「バレットの歌」「プロポーズ」と叙情的で美しい曲ばかり。藤岡さんの美声で聴けるのは耳福ですね。
宣材写真

撮影:Miow Hirota

オーディションでのトムさんは、
穏やかながら演劇に対して熱い印象

——扮装のご感想は?
予想していたよりきれいだったな、と(笑)。タイタニック号の歴史を調べてみたら、当時の労働者の環境は劣悪でしたから。まあ、僕は小ぎれいな役よりも小汚いほうが得意なので。

——扮装とは逆に、バレットのソロナンバー「プロポーズ」がめちゃくちゃ美しいのがツボですね。以前から、藤岡さんにピッタリな役だと思っていました。
いや~(照)、頑張ります。

撮影レポ写真

シリアスな表情でカメラを見つめる。

——豪華キャストが揃っていますが、お馴染みの方は?
鈴木綜馬さんは『レ・ミゼラブル』でご一緒させていただいて、それ以来。古川雄大君は今、『ファースト・デート』で一緒。シルビア・グラブさんは共演は2本ですが、ライブでよく一緒に歌っていますから、久しぶりという感じはしないですね。

——演出家のトムさんとはお会いになりましたか。
オーディションの時に。『ミス・サイゴン』の「ホワイ・ゴッド・ホワイ」を歌いました。『タイタニック』という作品の音楽性がクラシカルなものなのか、ポップスに近いものなのかわからなかったので、どちらでもいけそうな曲を選びました。トムさんに、どちらの雰囲気で歌ったほうがいいかを訊ねたら、クラシカルなほうで、との指示でしたね。トムさんは穏やかな方でしたが、演劇に対してすごく情熱がある印象を受けました。

——トムさんにはお稽古で絞られそう?
どうでしょうね?以前、日本で上演された『タイタニック』はグレン・ウォルフォードさんが演出しましたが、僕も『ブラッド・ブラザーズ』でグレンさんの演出を受けました。グレンさんは僕のこの10年の役者人生の中でベスト3に入る演出家だと、大変刺激を受けました。

撮影レポ写真

ウエストを調節中。ちょっと素の顔?

グレンさんは演劇を見る時に、観客として楽しむ大らかな脳みそと、もうひとつ真逆の、その観客の後ろから見ているであろうクールな脳みそを持っているんです。立ち稽古をしていても、「もっと天真爛漫にやってみて」と言われて、やると、ゲラゲラ笑っている。笑った直後に、「OK、ありがとう!」と言われ、ほっとすると、「それはToo Muchだね」と。今、笑ったよね?みたいなことはあるのですが、そうやって、楽しみながらいろいろ試してみる。

なおかつグレンさんは日本語がわからないのに、「今、台詞変えたね」と、台詞に対して敏感でした。「台本に忠実にやってください」とも言われました。そういった意味では、役者としてやらなきゃいけないこと、やっていい限界がどこなのかの線引きをしてもらえる、役者の力を引き出すのがすごく上手い演出家だと思いました。恐いオーラを出して、お前それじゃだめだ!というタイプの演出家もいらっしゃるでしょうけど、そうではなく、役者が可能性を持って演技に取り組めるように背中を押してあげられる演出家はいいな、と。
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