相性の良さは2ペダルだが……
あざやかなヤス・マリナ・ブルーのM4。イメージカラーである。従来のM3クーペに比べると、やはりひとめで立派になった印象を受ける。インテリアの質感なども、上級セグメントの上位グレードと比べても遜色ない仕立てとなった。クラッチペダルを踏み込み、エンジンスタートボタンを押す。掛かった瞬間のサウンドは勇ましい。これは、最近の高性能モデルのトレンド。すぐさま、すーっと大人しくなるのも、同じく、そうだ。V8から直6ツインターボへとダウンサイズされているが、止まっているときの音の迫力はさほど変わらない。アイドリング時でも、ドライバーを“その気”にさせる脈動が伝わってくる。
クラッチ操作などに気を遣わせる、なんてことは最新のMTにかぎってありえない。反力にまかせてジュワッと繋げば、アイドリングスタートも可能である。ロケットスタートを決めたいわけじゃないので、繋がってからジワリと踏み込んでいく。
最新のターボエンジンを得て、M4は3ペダルよりもむしろ2ペダルとの相性がよくなった、というのが海外試乗会で得た感想だったが、今回、あらためて6MT仕様に乗ってみても、そのイメージはさほど覆らなかった。
ただ、面白いかどうか、と聞かれれば、やっぱり面白いとは思う。新設計のトランスミッションは、かっちりとしたフィールと精妙な節度感が魅力で、動かしていることそのものが楽しい。NA時代に比べて、高回転域まで引っ張って楽しむという魅力には欠けるけれども、手と足の共同作業による変速という面白みだけは、依然として2ペダルのパドルシフトでは得難い。エンジンの調子とドライバーのタイミングがあって、クルマが何のストレスも感じずギアを変え加減速に転じる感覚は、機械を操る醍醐味として普遍というべきだろう。
もっとも、4つあるドライブモードのうち、スポーツモードにはレブコントロール機能がついていて、便利だけれども興ざめだった。スポーツ+モードで、すべてをコントロールしたいというのが、3ペダルをあえて選ぶ乗り手の思いじゃないか。クルマとのリズムがぴったりあった瞬間の、あの何とも言えずゾクゾクする感覚。それこそが、スポーツカーを操る楽しみというものなのだから。