マネジメント/マネジメント事例

ソニーとアップルの明暗を分けた21世紀型市場戦略とは

組織マネジメントとマーケティング戦略は切っても切り離せない関係です。そんなマーケティング戦略のなかで、対を成す代表的な考え方があります。それが、マーケットインとプロダクトアウトです。ソニーのトランジスタラジオとアップルのiPhoneを事例にこの用語を解説。日本の家電・電機復活の鍵が、そこにあるはずです。

大関 暁夫

執筆者:大関 暁夫

組織マネジメントガイド

プロダクトアウトとマーケットインという考え方

はじめに対をなすふたつのマーケティング思想について簡単に説明します。ひとつは、プロダクトアウトと呼ばれる考え方であり、今ひとつはマーケットインと呼ばれる考え方です。

プロダクトアウトとは、企業が製品やサービスを世に送り出す際に企業の論理や技術優先の考え方でおこなうこと。他方マーケットインは、それとは逆に受け手である購買者の動向や嗜好を優先した考え方でおこなうことです。

解説

プロダクトアウトからの転換点だったウォークマンの登場

このふたつの考え方は、どちらを取った場合も企業活動における開発、製造、販売あらゆる場面で貫かれることになります。そのため、どちらもマーケティング姿勢の域を越えて企業そのもののマネジメント姿勢になりうることから、企業運営に大きな影響を与えるものとして捉えられているのです。

 

トランジスタラジオはプロダクトアウトの好事例

戦後日本の企業活動において戦後復興から高度成長が続いていた間は、「作れば売れる」「出せば売れる」という需給関係が続いていました。メーカーはどこも持てる技術を活用して創造できる製品を世に送り出し、消費者の満足感を高めてきたという歴史があります。

例えば、ソニーが50年代半ばに開発し世界で初めて製品化に成功したトランジスタラジオは、それまでの大型ラジオの真空管をトランジスタ技術に置き換えることでラジオに革命的な小型化をもたらしました。

このトランジスタラジオが改良され、結果として生みだされたポータブルラジオは、気軽に持ち運びできることがうけて爆発的なヒット商品となるわけですが、これはあくまでソニーの技術力優先で開発された製品であり、当時のソニーはプロダクトアウト思想に基づいて製品開発をしていたと言えます。

付け加えるなら、当時の売れ筋電化製品である、カラーテレビも電気洗濯機も電気冷蔵庫も、すべては家電メーカー各社の技術ありきで製品化され進化していったものでした。その意味からは、ソニーのトランジスタラジオに限らず、当時の家電はすべて各社のプロダクトアウト的経営姿勢の下で産み落とされたものであったのです。
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