ジャズ/シチュエーション別おすすめジャズ

落ち込んだ時に聴きたいオールドジャズおすすめ3選

今回は、落ち込んだ時にふと聴きたい、あたたかい音のするオールドジャズをご紹介いたします。一口にジャズ(JAZZ)と言っても、色々な種類があります。オールドジャズの時代は、現代のジャズがどこかに忘れてしまったあたたかい、どこかほっとする音にあふれています。

大須賀 進

執筆者:大須賀 進

ジャズガイド

落ち込んだ時にふと聴きたい、オールドジャズおすすめ3選

落ち込んだ時に聴きたいオールドジャズおすすめ3選

オールドジャズおすすめ3選

約百二十年の歴史があるジャズは、モダン・ジャズを中心として、モダンジャズ以前とモダン・ジャズ以後の大きく三つの時期に分かれます。

モダン・ジャズ以前のジャズがオールド・ジャズの時代です。その古き良き時代のジャズには、現代のジャズがどこかに忘れてしまったあたたかい音があふれています。

寒い日やつらい時には、心や体のトゲを取ってくれる、ほっとするあたたかい音が聴きたいものです。今回は、日々の生活の中で、疲れてしまい、落ち込んでしまった時などにきっと癒しの気持ちを与えてくれるオールド・ジャズをご紹介します。
 
<目次>
 

ニューオリンズの至宝 ソプラノ・サックス奏者 シドニー・ベシェ「ブルース・イン・ジ・エアー」より「サマータイム」

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「サマータイム」はスタンダードの中でも、ミュージシャンに好んで取り上げられる曲です。一説によると世界中で二万五千を超えるカバー録音があるそうです。おそらくは、これほど全世界で愛されているスタンダード・ソングもないでしょう。

この曲は、1935年ジョージ・ガーシュインによって黒人が主演のオペラ「ポーギーとベス」のために作られた曲です。

ほとんどのキャストが黒人と言う、当時にしては画期的な試みのオペラは、やはり世間の理解を得ることはありませんでした。しかし、その中の挿入歌「サマータイム」は、今日に至るまで世界中のあらゆる場所で演奏され続けています。

その先駆けとして、1939年に録音され、いまだに決定的名演と言われるのが、このシドニー・ベシェのソプラノ・サックスによる演奏なのです。

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「サマータイム」は、もともとオペラの中で、赤ちゃんへの子守歌として使われた曲です。このベシェによる演奏を一聴すれば、その母の子守歌のようなやさしさに、疲れたあなたの気持ちも癒されてくることでしょう。

ベシェのソプラノ・サックスは、細かいビブラートの多い、揺れ動くまさに歌うような奏法です。そのビブラートと、元来持っているサックス自体の音色の柔らかさが、何とも言えないあたたかな雰囲気を醸し出し、この「サマータイム」を名演としています。

後半に入ると、ドラムのシドニー・カトレットのスネアのロールとともに、段々と熱を帯びた演奏となります。はめをはずす一歩手前で引いてみせる大人の感性が、この演奏に品格を与えています。

いずれにしても、このベシェによる1939年の「サマータイム」の演奏は、この曲の最初にして、そしていまだに決定版です。これからいつの時代になっても、聴く者の心をほっとさせてくれるでしょう。
 

ラグタイム・ピアノの巨人 スコット・ジョプリン「ジ・エンターテイナー」(ジョシュア・リフキン演奏) 

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この「ジ・エンターテイナー」は、ラグタイム・ピアノの中でも最も有名な曲です。映画やテレビで頻繁に使われ、知らない人はいないほど。皆さんも、題名は知らなくても、流れてくるなり、「ああ、あの曲か」ときっとわかると思います。

この曲は、ラグタイム・ピアノの第一人者、スコット・ジョプリンの作曲によるものです。ラグタイムは、おもに酒場や女性のいる宿など、歓楽街のピアノとして広まりました。ジャズの元祖とも言われていますが、大きく違うのは、そのメロディがすべて譜面に書かれていたことです。

この「ジ・エンターテイナー」も例外ではなく、その譜面によって、色々なピアニストが独自の解釈で録音を残しています。その中でも、もっとも権威があり、なじみやすいと言われているのが、このジョシュア・リフキンによる録音です。

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もちろん、作曲者であるスコット・ジョプリンの演奏も残ってはいます。それと同じくらいに、こちらのジョシュア・リフキンの演奏も、今ではこの曲のスタンダードとなっています。CDなどの入手のしやすさも魅力です。

ジョシュア・リフキンは、スコット・ジョプリンを研究する音楽学者であり、自ら弾いてみせるプレイヤーでもあります。ラグタイムの研究ももちろんですが、その素養は多岐にわたり、バロックなどのクラシックでも世界的に有名な研究家です。

その上、ビートルズの名曲をバロック調に仕立て上げ、アルバムを作っているほど、やわらかい遊び心も持ちあわせています。

その堅物ではないジョシュア・リフキンの弾く、やさしいラグタイムを聴きながら、普段よりちょっと豪華な食事でもいかがでしょうか。クラシックなピアノの響きは、きっと食事の時間を楽しい時間に変えてくれるはずです。
 

楽しい副業ディキシーランド・ジャズ集団 ファイアハウス・ファイブ・プラス・トゥー 「ゴーズ・トゥー・シー」より「ミニー・ザ・マーメイド」

Goes to Sea

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楽しいディキシーランド・ジャズ集団、ファイアハウス・ファイブ・プラス・トゥーの登場です。

消防隊という変わった名前のこのバンド、移動時には本当の消防車を使い、メンバーの衣装は、真っ赤な消防服。その格好で、楽しいオールド・ジャズのディキシーランド・ジャズを奏でます。

そして、それ以上に普通と違うのは、このバンドが、実は素人集団だということです。それぞれのメンバーのほとんどが本業を持っています。

副業で、というより最初は純粋に会社の昼休みに楽器を持ち寄って、遊んでいたものが、本格的になったというから驚きです。結果として全米中で有名になってしまったというシンデレラストーリーを持つバンドなのです。

アルバムを聴けば、よもやこの楽しい演奏が、会社の昼休みに社員によって演奏されていたものとは、誰もが思わないでしょう。それほどに、技術性、音楽性の上でも、プロが逃げ出すほどの完成度です。

そして、なにより全員が躍動して演奏を楽しんでいる様が容易に想像できて、聴いている私たちに幸福感を与えてくれます。まるで、テーマパークに迷い込んだかのような楽しさが、このバンドの持ち味。これにも、実は秘密があります。

彼らの楽器演奏を許した鷹揚な会社とは、世界的に有名な、誰もが知っている、しかも日本でも人気のある企業なのです。その企業は世界的ヒットのアニメや映画を多数発表し、世界中にテーマパークを展開しているディズニー。

メンバーは、アニメーション・ディレクターやキャラクター・デザイン担当、助監督やシナリオ・ライターとして日々クリエイティブな仕事に携わっていました。あくまでも趣味で、ディキシーランド・ジャズを演奏していたというわけです。

それが、会社の宴会やパーティーに頻繁に呼ばれるようになり、調子に乗ったメンバーは、古い消防車を買い、消防服をそろえて、ここに正式に「ファイアハウス・ファイブ・プラス・トゥー」というバンドを発足させたのです。それは、1949年のことでした。

その勢いで、ライブハウスに週に一日だけ出演させてもらうようになり、それが評判になりました。そして、なんとそのライブの様子がテレビ局によって全米に流れるということになったのです。彼らは一日にして全米で一番有名な素人ディキシーランド・ジャズバンドになったのです。まさにシンデレラストーリー!

この「ゴーズ・トゥー・シー」は海にちなんだ曲ばかりがズラリと並ぶ、彼らの代表作です。全曲パークに迷い込んだかのような楽しい出来です。特に三曲目「ミニー・ザ・マーメイド」は、題名と言いヴォーカルと言い雰囲気はもうディズニー・シー!

落ち込んでいたことなど忘れて、楽しい気持ちになること請け合いです。さあ、このまま遊びに出かけて思いっきり楽しんでみてはいかがですか。

古くても良いもの、オールド・ジャズはいかがでしたか?オールド・ジャズには、なんとなく癒しの効果があるように感じます。

仕事に追われ忙しい毎日を送っていれば、時には落ち込んでしまう事もあります。そんな時には、ほのぼのオールド・ジャズに浸ることをおススメします。きっと、明日からの活力がよみがえってくるはず。
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