日本語話者が韓国語の先生になるために必要な知識

 
日本語話者の韓国語講師に求められる資質は?

日本語話者の韓国語講師に求められる資質は?



この記事をお読みになっている方は日本在住の日本語母語話者の方がほとんどでしょう。これらの方々にとって韓国語はノンネイティブ言語となるので、韓国語母語話者の先生と比べると不利な点も出てくるのは否めませんが、学習者と同じ母語を持つという利点もあります。韓国語の先生になるにはこの不利な点をなるべく埋め、これらを限りなくネイティブ先生の条件に近づけつつも、日本語母語話者の利点を生かしていくことが必要となります。具体的に見ていきましょう。

不利な点、すなわち、限りなくネイティブに近づけたい点としてはまず、
・発音やイントネーションの良さ
・語彙の豊富さ
が挙げられると思います。
これは疑問を挟む余地がないでしょう。

次に、文章の正誤や微妙なニュアンスの差を判断できる能力が必要となります。
例えば、
「~で、~ので」を表す「-아/어서(-ア/オソ)」、
「~ので、~から」を表す「-(으)니까(-ニカ)」、
「~ので、~のために」を表す「-기 때문에(-キッテムネ)」
これらの違いなど、ネイティブなら瞬時に「この文章は自然だ」「これはおかしい」と判断がつくのですが、日本語話者には瞬時に判断できないときもあります。
そんなときは、「-아/어서 は命令形・、依頼形と共に用いることができない」、などの文法的知識でカバーすることになります。よって、これらの文法的知識は必須です。

そして、文化・社会的知識やそれにまつわる経験値の高さも求められます。
例えば、韓国語を教えるに当たっては、秋夕という意味の『추석(チュソ)』や旧正月を表す『설날(ソルラル)』などの韓国ならではの文化・風習だけでなく、歴史的な有名人などについて学習者に伝えていく必要性が出てきますが、これらについてある程度の知識があり、さらには実感を持って伝えられると良いと思います。


■日本語話者が韓国語先生になるために必要な知識
  • 発音やイントネーションの良さ
  • 語彙の豊富さ
  • 正しい文法的知識
  • 韓国文化、社会、歴史上の人物の知識などの教養
 

日本語話者の韓国語の先生の長所と短所

■日本語話者の韓国語の先生になる場合の短所
 日本の外国語教育業界ではネイティブ志向が強い

日本の外国語教育業界は、どちらかというとネイティブ至上主義的な雰囲気があることは否めません。学習者も「どちらかと言えば、ネイティブの先生から教わりたい」という方がどうしても多いと思います。私は双方の講師の長所も短所も理解しているので、一概にどちらが良いとは言いきれませんが、学習者のネイティブ志向がある限り、講座運営者や学院経営者も「どちらかといえばネイティブを望む」となってしまいがちです。日本語話者が韓国語の先生になろうという場合、日本語話者というだけでハンディを背負うことになるので、上記のような課題点を克服し、武装しておく必要があると思います。

■日本語話者の韓国語の先生になる場合の長所
 学習者が理解しやすい日本語で韓国語の説明ができる
 学習者の疑問に的確に答えられることが多い

日本語母語話者の先生の有利な点としては、学習者が理解しやすい日本語で、韓国語について説明することができることでしょう。また、学習者の疑問の核心を捉えやすいだけでなく、実感として理解でき、的確に答えられることが多い点も挙げられます。

例えばこれまで韓国語を学ばれていて、韓国語ネイティブの先生に投げかけた質問に対し、理想的な回答が返ってこないことはありませんでしたか?



以前、面接に訪れた韓国語講師志望の韓国語ネイティブの方が、助詞『~が、~は』を表す『-이/가(-イ/ガ)』について、 パッチムのある名詞+이 例:사람이(サラミ/人が) パッチムのない名詞+가 例:나라가(ナラガ/国が) という法則について知らず、無意識に使い分けていたという例もあります。

私たち日本語話者でも、突然「動詞のカ行変格活用について説明せよ」と言われたら、「なんだっけ?」となるのと同じことで、韓国語教育について学んだことのない韓国人ならありうることです。その点、韓国語を外国語として学んできた日本語話者からすると、韓国語を教える素地はすべての人が潜在的に身についていると言っても過言ではありません。

私が韓国の韓国語教師養成課程を受講したとき、すでに自校の運営を開始していたので、そのときの養成課程の責任者の先生に
「韓国語講師に最も必要なものは何でしょうか?」
と尋ねてみました。すると逆に
「泉さんならどう考える?」
と聞かれ、
「う~ん、文法的な知識とか……」
と答えたところ、
「そういうものは身に着けようと思えばどうにでもなること。最も大切なのは、臨機応変さ(임기응변)と親切心(친절함)です」
とおっしゃっていました。
いま、この言葉を、まさにその通りだと実感しています。

学習者の方はすべての方が目標もレベルも違い、そして発する言葉、反応が違います。その方々にうまく合わせ、持ちうる最大限の韓国語を引き出し、表現力や可能性を広げていく能力。そして、韓国や韓国語について知ってほしいという熱い想いに支えられた面倒見の良さ、親切心……確かに、これらが最も大切なことと言えるような気がします。「韓国語の楽しさを伝えたい!」という方には是非チャレンジしてほしいですね。

【関連サイト】
・韓国語学習ジャーナルhana Vol. 03
・学校教員統計調査:文部科学省

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