損害保険/損害保険関連情報

損害調査マンに訊いた土砂災害のウラ側2

前回に続き、今回も損害調査担当のH氏へのインタビューを掲載します。今回は、土砂災害等の自然災害の被災地にはびこる悪徳住宅業者の実態、そしてトラブルに発展することなく保険金を請求するために大切なポイントを伺いました。

清水 香

執筆者:清水 香

火災保険の選び方ガイド

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広島にも出没!保険会社やリフォーム業者を名乗る悪徳訪問業者に注意

被災後は、住宅業者やリフォーム業者を名乗る訪問業者に注意

被災後は、住宅業者やリフォーム業者を名乗る訪問業者に注意

清水 近年、被災地に住宅業者とかリフォーム業者を名乗る悪質訪問業者が出没して「火災保険を使えば、負担ゼロで住宅修理ができるので工事の契約を」などと、強引な勧誘が行われていると耳にするのですが。

参考:火災保険に絡む、悪質勧誘・トラブルに注意!

Hさん そうなんです。保険のプロではない訪問業者が、「保険を使って修理できますよ」「見積もりも保険金請求も私が代行します」と言葉巧みに勧誘しています。強引な勧誘に負けて契約を結んだところ、その後さらなるトラブルに発展した、といったケースが少なくありません。

清水 国民生活センターなどに寄せられたトラブル例をみると、契約したら手抜き工事をされたとか、にもかかわらずその後まったく対応してもらえない、支払われた保険金以上の修理費の請求を受けた、あるいはいったん契約したけれど、やはり不安に思い契約を解除しようとしたら高額の違約金を請求されたなどのトラブルに発展したケースもあるようですね。

Hさん こうした訪問業者に仕事を依頼すると、火災保険金の請求代行と住宅修理サービスを一連として、契約を取り交わす場合があるようです。しかしそうした契約書のなかには、たとえ保険金が支払われず修理をしない場合でも、修理見積もりの50%を支払わなくてはならないなどと書かれた悪質なものもあるんですよ。

清水 何もせずに50%とはひどいものですね。

Hさん こうしたトラブルは近年、多数発生していて、損保業界でも継続的に注意喚起を行っています。業界ではこうした訪問業者のことを「特定業者」と呼んでいます。土砂災害があった広島にも特定業者は出没しているようです。

清水 被災直後には広島でも注意喚起がなされていましたが、やはり…

Hさん 東日本大震災以降は、大雪や竜巻など、自然災害による住宅被害が多数発生していますが、同時にこの3年間は、特定業者に関するトラブルの話も多数耳に入ってきています。他県から出向いて勧誘する特定業者もいるようで、被災地はそういう業者であふれているので本当に注意が必要です。それだけではありません。被災地以外でも勧誘はしばしばなされています。

清水 被災地を中心に、同じ特定業者が各地を渡り歩いていると。

Hさん そのようなケースもあるようです。よい人を装って近づいてくる特定業者もいます。とても残念なことですが、お客様によってはその特定業者をすっかり信用してしまい、こんないい人が悪いことをするはずはないから、保険金を支払わない保険会社が悪いということになってしまったりすることもある。

清水 それは…保険会社としてもつらいですね。

Hさん 特定業者は火災保険のプロではありません。ですから保険金の支払い対象にならないケースかどうかにかかわらず「保険を使える」と勧誘してしまいます。そういわれると、お客様は自分が知らないだけで、本当は保険金が受け取れるのだと思ってしまうようで、対象にならないケースでも「保険金が受け取れると聞いた」と、お客様から保険金を請求されることもあります。こういった特定業者の無責任な発言で、今度は、お客様と保険会社の間でのトラブルに発展することもあるのです。

清水 どんな時に保険金が受け取れるかを契約者自身が正しく認識していないことで、二重三重のトラブルを生んでしまうわけですね。

Hさん 一方で、特定業者と契約を交わし、書類にサインしてしまった後でその内容に驚き、どうしようとお客様からセンターに相談をいただくこともあります。とくに高齢者のお客様に多いです。

清水 消費者トラブルの多くは高齢者が巻き込まれているといいますが、このような特定業者によって火災保険でも、高齢の方がトラブルに巻き込まれがちということですね。こうしたトラブルを起こさないためには、日頃からの家族や親族のサポートも大切になりますね。
 

作り話を鵜呑みにすると自分が詐欺罪に問われる事態になるかも

Hさん 火災保険は、どのような原因で住宅が損害を受けたかで保険金が支払われるかどうかが決まりますが、実際には被災していないのに「『災害で被害に遭った』ということにして請求しちゃおう」と、お客様をそそのかす悪質なケースもあります。

清水 でも、いくら特定業者がそう言ったとしても、作り話、つまり嘘を鵜呑みにして保険金請求するということになると、契約者自身が保険金詐欺をはたらくことになってしまいますよね?

Hさん 筋としてはそうなります。ですから、そういうことが明らかになった場合には、その件に関して当社は徹底的に調査をしていきます。

清水 契約者自身がどのような場合に保険金が支払われるかを知らないと、それを特定業者に悪用されて犯罪者にもなりかねないということですね。

Hさん いうまでもないことですが、保険金を支払うのは保険会社であって、特定業者ではないのです。見ず知らずの第三者の言うことを鵜呑みにしないで、まずは損害サービスセンターなどに、被災してこのような損害が生じている、どうすればよいかと、連絡をいただきたいです。

清水 火災保険の契約先は損害保険会社ですからね。

次のページでは、保険金請求時に揉めないために理解しておくべきことを解説します
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