「供給過多で、電気の安定供給が難しくなる」というのが最大の理由
地域電力会社5社がそろって、売電の申し込みを一時保留する事態が発生する。
同社の説明資料によると、すでに九州電力での買取り制度による設備認定量は全国の約26%を占めており、夏季ピーク需要に対する比率でみても最も高い水準に達しています。そこへ、買取り価格の引き下げ直前(2013年度末)に駆け込みでの申し込みが殺到したため、すべての電力を買い取った場合、太陽光の発電電力が需要を上回ってしまうのです。
電気は使用(需要)と発電(供給)が同時に行われることから、電力を安定供給するためには、その需要と供給を常時一致(需給をバランス)させる必要があります。供給が需要を上回ってしまうと、電気を安定的に送電できなくなるのです。
そのうえ、太陽光は夜間に発電できず、また、昼間であっても天候の急変で発電量が変動すれば、日中でも需給バランスの安定は困難になります。最悪、需給バランスが崩れると大規模な停電を引き起こす恐れがあり、日常生活に大打撃を与えかねません。
脱原発の機運が高まるなか、早急な制度設計の再構築が急がれる
こうした事情を抱え、九州電力以外にも北海道電力、東北電力、四国電力、沖縄電力で申し込みが保留されています。「当該制度の制度設計そのものが甘かった」として、政府を批判する論調が目立ち始めています。2016年には家庭向け電力小売りの完全自由化が予定されており、こうした動きを見据えてハウスメーカーやマンションデベロッパーは、スマートハウスやエコマンション開発に尽力してきました。固定価格買取り制度(売電)の広がりで、電力の引き込み方式を「一括受電方式」に切り替え、電気料金の引き下げを実現するマンションが増えています。さらに、今日では技術の進歩によって専有部分単位での個別売電ができるマンションがお目見えするなど、グリーン・イノベーションには目を見張るものがあります。
HEMSも進化しています。翌日の電力使用のピーク予想情報に基づいた「ピークカット情報」が自宅の端末に送られて来た際、その情報をもとに実際に節電を行なうと、節電した量に応じて報奨金(ポイント)が支払われる仕組みが登場しています。貯まったポイントは翌月以降の電気料金として利用でき、こうした「デマンドレスポンスサービス」がさらに節電意欲を刺激します。
それだけに、売電制度の迷走は住宅産業の足かせとなります。後戻りはできないのです。脱原発の機運が高まるなか、再生可能エネルギーの重要性は高まるばかりです。もはや電力会社だけの問題(都合)ではありません。国を挙げたオールジャパンでの早急な制度設計の再構築が望まれます。