七味唐辛子は風邪薬だった!?
八幡屋礒五郎の営業部主任、金井一行さんにレクチャーしていただきました
そもそも七味唐辛子は、江戸時代にからし屋徳右衛門という方が考案したもので、医者や薬問屋が多く集まる薬研堀(現在の日本橋あたり)でお店を出して流行ったことより、七味唐辛子の別名を「薬研堀(やげんぼり)」ともいうようです。
ちなみに薬研とは、漢方薬を作るために生薬を引いてすりつぶす器具のことで、舟形のくぼみの中に生薬をいれ、その上に車輪状の道具を前後させて粉砕します。今でも漢方薬局などでオブジェとして置いているお店もあり、素材は石や鉄、金属製などもあります。
七味唐辛子は7つの味と書きますが、その中身は漢方薬がヒントになっていて、とくに風邪の症状にオススメだといわれています。ということで、まずは七味唐辛子に配合されている代表的な薬味と、その特ちょうをご紹介しましょう。
七味唐辛子に欠かせない辛さの決め手となるもの。単味なので一味唐辛子ともいう。焙煎することで辛味と風味が倍増し、生唐辛子を加えて八味にするお店もあるそう。カプサイシンが食欲増進に役立ち、カラダを温めて血行促進します。プラスの作用として、漢方では余分な湿気を取る働きもあるとされます。
漢方では、気をめぐらせ、発散させてぞくぞくっとする風邪を追い払い、消化機能を促進させます。八幡屋礒五郎さんでは、漢方薬でも使われている「赤しそ」を使用しているのがポイント。ガイドのわたしもお気に入りのすがすがしい香りで、和の上品な風味が素材を引き立てます。
「風味、香りとも胡麻に引けをとらない」と店舗リーフレットにも書かれているように、かむと芳ばしい香りがします。麻の実は、腸をすべりやすくし、便秘の解消に役立つ「麻子仁丸(ましじんがん)」という漢方薬にも配合されているもので、コロコロ便や産後のそれにも役立ちます。
爽やかな香りと辛味が特ちょう的。カラダを温め、寒気を追い払います。胃腸の働きを促して嘔吐を止めたり、余分な水分を排出する効果もあります。八幡屋礒五郎さんでは原点に戻り、原料を国内または長野県産のものにシフトしているそうで、生姜も地元産だそうです。
痺れる辛さと香りがポイント。麻婆豆腐の味を左右するスパイスでもあります。おなかを温め、消化を促進します。湿気をとり、魚の生臭みを取るので、「うなぎに山椒」は理にかなった組み合わせです。
温州ミカンの成熟した果皮。古ければ古いほど薬効が高いと漢方ではいいますが、香りは新しいもののほうがよいでしょう。消化機能を整え、気のめぐりをスムーズにするので、胃のもたれや膨満感にオススメです。痰を取る働きもあります。
香ばしい香りと油分で、唐辛子の辛味を調和します。漢方では黒ごまは腎に、白ごまは肺にとくに作用するといわれ、腎の機能を高めるなら黒、咳や乾燥が気になるなら白と使い分けたりします。焙煎することでより香りが立ち、風味も増します。
今回ピックアップした素材は、八幡屋礒五郎さんのベース七味です。これに「けしの実」や「ゆず」などが入っているメーカーもあります。次のページでは、お店によって異なる配合の話や、オリジナル七味作りの様子をご紹介しましょう!