外国人の言語に大らかなベルギー
外国を旅行して、かたことの現地語を話そうと一生懸命努力しているのに、意地悪な対応を受けたり、まったく無視されたりと不快な思いをした経験のある方はいませんか。その点、ベルギーはとても安心。英語だろうが、仏語だろうが、文法や発音にどんなに間違えがあっても、一生懸命にこちらの言わんとすることを汲み取ってくれます。とはいえ、ベルギーを旅行するなら、多少の予備知識やコツを知っておくと便利です。ベルギーは、人口1000万人ほどの小さな国ですが、言語環境は実に複雑で、正式な国語は蘭・仏・独語の3言語。北部フランダース地方では蘭語、南部ワロン地方では仏語(うちドイツ国境に近い一部の地域では独語)、そしてブリュッセル首都圏では蘭語・仏語の二言語が公用語ですが、EU諸機関を始め、1000以上もの国際機関があるため、英語もよく通じます。
というのも、蘭語は言語学的に見れば、英語のベースとなった言語。多少でも英語がわかるなら、よーく耳を澄ますか、想像力を駆使すれば、蘭語で書かれた表示や言われたことの3割位は理解できるはずです。また、蘭語はゲルマン系言語なので、ドイツ語の素養が多少でもある方には、英語とドイツ語の基礎知識を巧みに組み合わせれば、5割位まで理解することができるかもしれません。
世界的に見ても、蘭語話者の数は非常に少なく、南アフリカで話されているアフリカーンス(南アを植民地としていたオランダ語の派生系)を含めても3000万人弱と言われています。また、欧州では中世以来王侯貴族やインテリの間では仏語の通用度が圧倒的に高かったこと、現在では、EU諸機関初め、NATOなど1000以上の国際機関がこの国に集中していることもあって、ベルギーの蘭語話者の多くは、仏語、英語が堪能です。
一方、ベルギーの仏語話者は、残念ながら、英語に堪能な人は少ないのですが、それでも、ブリュッセルを始めとして、ベルギー国内の都市や観光客の多いところでは、押しなべて、英語の通用度が良く、流暢とは言えないまでも英語がわかればほぼ問題なく旅行や買い物ができると言えます。人々は文法の間違えやぎこちない発音に寛容なので、勇気を出して、英語や仏語のかたこと会話を試してみるには絶好のチャンスです!
ベルギー語はないけれど
ベルギーでは、蘭語と仏語が多く話されていると説明しましたが、厳密に言えば、ベルギーで話されている蘭語は、オランダの蘭語とは発音がかなり異なります。また、ベルギーの仏語は、フランスの仏語とは単語や慣用句が随分異なります。それは、英国とアメリカとオーストラリアとカナダの英語がそれぞれ異なるのと同じように考えれば、旅行者にとっては致命的な差異ではないはず。たどたどしいかたことの方が、むしろ愛嬌として親切な対応を誘うかもしれません。でも、旅人にとって、知っていると便利な違いや知っていると得な表現はあるので、ここで少し解説しておきましょう。
地名は蘭・仏・英語で認識しておくと便利
ベルギーの玄関口である首都圏ブリュッセルは、英語ではBrussels(ブラッセルズ)、蘭語ではBrussel(ブラッセル)、フランス語ではBruxellesですが、ベルギー仏語の発音では『ブリュッセル』、フランス仏語の発音では、『ブリュクセル』とそれぞれ微妙に異なります。また、駅名や地名は、現在いる地域の公用語で表示・発音されるのが原則です。ブリュッセルは二言語併記が義務なので、駅名や地名は蘭仏両方で書かれているので驚かないでください。耳と目と直感を磨いて、行きたい土地の名称の表記や発音が異なるということを認識しておくと便利です。以下に、ベルギーの主要都市名(駅名)を蘭語・仏語・英語で表記しておきます。
注:
*1:フランス人は、Bruxellesを「ブリュクセル」と発音しますが、ベルギーの仏語話者は、「ブリュッセル」と発音する方が多いです。
*2: フランス人は、Anversを「アンベール」と発音し、パリの地下鉄にも同名の駅がありますが、ベルギーの仏語話者は、「アンベルス」と発音するので要注意。