ブランドは構築に長年、崩壊は一瞬
では次に、一度崩壊してしまったブランドイメージはいかにして再構築されるべきなのか、つまりマクドナルドが今後どのようにしてイメージ回復をはかるべきなのかという観点から考えてみたいと思います。言わずもがなではありますが、今回の件で何よりも必要なことは、マクドナルドのブランドイメージを大きく崩壊させた中国生産の材料の変更です。自社ブランド信頼の回復は、信頼を失墜させた原因の払しょく抜きには絶対にありえません。
実際にマクドナルドも、事件発覚以降すぐさま中国生産材料の取り扱いをすべて取りやめ、タイ産に切り替えました。しかし、この対応は必ずしも功を奏したとは言い難い状況にあります。発覚直後の8月は売上で前年同期比25%の大幅減、同社自身が「9月以降も当面15~20%減で推移する」とみていることが、何よりその事実を如実に表していると言えるでしょう。
マックブランド復権のカギを握るのは高級化路線か
いかに出直しをはかるか
「食の安全」問題での信頼失墜によるブランドイメージ崩壊は、08年に起きたJTフーズの中国製冷凍餃子中毒事件にも見ることができます。同社は日本たばこ産業という親会社の圧倒的な信用力で安定的な事業を展開していました。しかし事件発生により、同社はブランドイメージ回復の難しさと親会社JTブランド全体への波及リスクを察知し、「カトキチ→テーブルマーク」という社名変更によるブランド切り替え策をとることで、出直しをはかったのでした。ブランドイメージ失墜の破壊力の大きさと、その回復の難しさを物語る一件と言えるでしょう。ブランドイメージは、消費者の「信頼」の裏返しとも言えます。その構築には、長い年月と多額の投資がかかるものですが、油断による崩壊は一瞬です。マクドナルドの一件は、ブランドイメージの危うさとその回復の難しさを教えてくれているのです。
追記
2015年1月、マクドナルドが今度はナゲット商品への異物混入事件で釈明に追われることに。ビニールテープ状の異物が混入していたという今回の事件は、消費期限切れの鶏肉使用に比べて健康被害への懸念はかなり少ないものの、前回同様あるいはそれ以上にメディアに大きく取り上げられています。問題を起こし中国からタイへと生産拠点を移したナゲットに、またもや不祥事が発覚したからに他なりません。単純な事の重大さ以上に騒ぎが大きくなったのは、前回の不祥事に対するマクドナルドの対処への疑問符が大きく頭を持ちあげてきたことを示しているのです。
すなわち問題の焦点は、単なる食品衛生管理からマクドナルドという企業としての信用問題に移行していると言えるでしょう。その観点から申し上げるなら、今回の会見にトップが出席しなかったことは、いかなる理由があろうとも大きなマイナスであることは間違いありません。
信用失墜はブランド価値の喪失に他なりません。前回も申し上げましたが、これ以上の信用失墜、ブランド価値喪失を食い止めるには、利幅縮小あるいは商品の値上げをしてでも、海外生産から国内生産への全面切り替え等抜本的な改革姿勢をトップ自らが示す以外にないでしょう。マクドナルドの社会的信用およびブランド価値回復への道は、一層険しくなったと言わざるを得ない状況に陥っているのです。(2014年10月の記事から15年1月に新たに追記)