ミュージカル/注目のミュージカルレビュー・開幕レポート

2014年11~12月の注目!ミュージカル(9ページ目)

深まりゆく秋の空気に冬の寒気が感じられるようになってきました。人恋しい季節には、ロマンティックなミュージカルはいかがでしょうか。今回は『Onceダブリンの街角で』『スリル・ミー』『BEFORE AFTER』『コンタクト』『マザー・テレサ 愛のうた』『金魚鉢』『bare』『劇団四季FESTIVAL! 扉の向こうへ』をご紹介します。開幕後は随時観劇レポートも追記していきますので、お楽しみに!

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド


劇団四季FESTIVAL! 扉の向こうへ

上演中~15年2月1日=電通四季劇場「海」

『劇団四季FESTIVAL! 扉の向こうへ』撮影:上原タカシ

『劇団四季FESTIVAL! 扉の向こうへ』

【見どころ】
年末年始、舞台ファンに嬉しい演目が登場しました。劇団四季が今年一年への感謝の気持ちを込めて、今年、来年の演目を中心に名曲を新演出で歌い踊る『劇団四季FESTIVAL! 扉の向こうへ』。ヴォーカル・パート、ダンス・パートともに男女数名ずつの精鋭メンバーが、加藤敬二さん振付のナンバーを披露してゆく形式は『ソング&ダンス』シリーズと同じですが、今回は来年の新作『アラジン』を、出演候補俳優も参加して紹介している点で、さらにわくわく感の募る内容となっています。シャープに、優雅に、エネルギッシュにと自在に踊り分ける俳優たちのダンス・テクニックを観るだけでも刺激的な舞台。劇団四季の豊富なレパートリーも体感でき、四季初心者の方々にもお勧めしたい作品です。

【観劇ミニ・レポート】
『劇団四季FESTIVAL! 扉の向こうへ』撮影:上原タカシ

『劇団四季FESTIVAL! 扉の向こうへ』撮影:荒井健

筆者が観た日のキャストはヴォーカル・パートが味方隆司さん、瀧山久志さん、上川一哉さん、飯田達郎さん、芝清道さん、岡村美南さん、雅原慶さん、山本紗衣さん、吉田絢香さん。ダンス・パートは松出直也さん、斎藤洋一郎さん、西尾健治さん、松島勇気さん、水原俊さん、大森瑞樹さん、朱涛さん、厂原時也さん、加藤久美子さん、駅田郁美さん、相原茜さん、相馬杏奈さん、井上佳奈さん、原田麦子さん、川井美奈子さん、村上京子さん、小菅舞さんです。一幕はヘンデルの「ハレルヤ」を皮切りに、『マンマ・ミーア!』『壁抜け男』『赤毛のアン』『ウィキッド』『ジーザス・クライスト=スーパースター』と、今年、劇団四季が全国で上演していた演目のナンバーが続々と登場。海外の大作群の中にはファミリー・ミュージカル『魔法をすてたマジョリン』のナンバーもしっかり入っていて、思わず一緒に口ずさみたくなります。

アースラのタコ足を背景のいばらのような映像で想起させ、姉たちの消えてゆく過程を様々な趣向で見せる「パパのかわいい天使」(『リトル・マーメイド』)など、曲の骨子は据え置きながら、ちょっとしたアレンジで全く別の顔を見せるナンバーが続くいっぽう、『オペラ座の怪人』の「ハンニバル」「スィンク・オブ・ミー」(順に吉田さん、山本さんが素晴らしい歌唱)等、歌ありきのナンバーはオリジナルに近い演出で登場。ファン心理をふまえた、心憎い演出です。個人的には、青空の広がるシンプルな舞台で、女性コーラスとともに上川さんが“新たな世界へ踏み出してゆこう”と歌う「エニイ・ドリーム・ウィル・ドゥ」(『ヨセフと不思議なテクニカラー・ドリーム・コート』)が爽やか。まだ日本人キャストでは演じられたことのないロイド=ウェバー&ティム・ライスの初期作品ですが、もともと学校演劇用に作られた、親しみやすい曲ばかりの作品。ぜひ劇団四季で上演してほしいものです。
「劇団四季FESTIVAL!扉の向こうへ』撮影:上原タカシ

「劇団四季FESTIVAL!扉の向こうへ』撮影:荒井健

二幕ではお待ちかね、来年開幕の『アラジン』から序曲、「フレンド・ライク・ミー」「ホール・ニュー・ワールド」が披露されましたが、「フレンド~」ではこの日、先日のオーディションで候補に選ばれた深みのあるバリトン・ボイスの持ち主、瀧山さんがジーニー役を担当! オーディションではお一人の歌唱でしたが、ここでは女性たちに囲まれた華やかなシチュエーションとあってか、より“面白み”も増し、引き出し数が無限のジーニー像を想像させます。「5月の開幕ではこういう感じになるのかな?」と思いを巡らせた観客も多いことでしょう。瀧山さんはこの後、『ソング&ダンス』でお馴染みの“何が出るかはお楽しみ、日替わりナンバーコーナー”の「モーニング・リポート」(『ライオンキング』)でも、オフィスで書類を手に報告にやってくる部下たちをさばく部長(?)役を演じるなど、大活躍。ジーニーはもちろん、今後様々な演目でエンターテイナーぶりを発揮してくれそうです。
『劇団四季FESTIVAL! 扉の向こうへ』撮影:上原タカシ

『劇団四季FESTIVAL! 扉の向こうへ』撮影:荒井健

もう一つ、来年の上演が楽しみな『クレイジー・フォー・ユー』からも4曲が登場。ロングドレスの岡村さんがステージ上段に登場し、しっとりと「サムワン・トゥ・ウォッチ・オーバー・ミー」を歌うひとときにはジャズ・ライブのようなお洒落感が漂います。『一歩ずつ』(『リトル・マーメイド』)では、歌とシンクロして手話も使用。華やかさだけでなく、繊細な表現も追及している点に、加藤さんのこだわりがうかがえます。『キャッツ』のミストフェリーズのくだりでは、松島さんが猫の扮装ではなく人間の姿で、ほれぼれするようなピルエットを披露。“扮装無し”だからこそ、振付の独創性やダンサーの技術力もくっきりと浮き彫りになり、新鮮です。

『ソング&ダンス』でもお馴染みの、スーツ&ステッキ姿の面々がスタイリッシュに魅せる「ビー・アワ・ゲスト」(『美女と野獣』)で盛大なるエンディング…と思ったら、カーテンコールの後に一人また一人と現れ、力強い「サークル・オブ・ライフ」(『ライオンキング』)、そして「さよならまたね」(『サウンド・オブ・ミュージック』)で、本当の締めくくり。目と耳、そして心までが幸福感でいっぱいになったところで、この日の水先案内人役、味方さんが「また劇場でお会いしましょう」の一言とともにドアの向こうへ消えてゆくと、そのドアもぱたんと倒れ、消えてゆく。マジシャン一家のご出身である加藤さんらしい、マジカルで小粋な演出ですが、同時にそれは、舞台というものが形を持たず、上演と同時に消えてしまう「瞬間の芸術」であり、観客の心の中でしか生き続けることのできないものであることを比喩しているよう。今、観たばかりの舞台をより心に焼き付けたくなるような、切なさも感じられる幕切れです。


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