『金魚鉢』
11月29日~12月4日=ワーサルシアター『金魚鉢』
『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャン役をはじめ、ミュージカル俳優として活躍するかたわら、清水邦夫やアーサー・ミラー等、ストレートプレイの演出にも精力的に取り組んでいる吉原光夫さん(過去のインタビューはこちら)。彼が主宰する「響人」がこの度、初の音楽劇を手掛けることになりました。
西川大貴さんが書いた本作は、卒業を控えた高校3年生4人組の物語。高校特有の閉塞的な「社会」の中で展開するドラマが、6~7曲のオリジナル曲を交えて描かれます。生ギターの演奏に併せ、八幡山の劇空間に「響人」ならではの、ちょっと屈折した(?)青春の歌声が響く模様。吉原さんは高校生役……はさすがに厳しかったらしく(!?)、先生役で出演の予定です。
響人『金魚鉢』稽古の様子 Photo:Marino Matsushima
高校という一種の閉塞コミュニティを、金魚鉢に例えた本作。大人になった主人公が当時を振り返る形で、高校生の何気ない、と見えて実は様々なさざ波がたっている日々が描かれてゆきます。この日の稽古会場は千歳船橋のAPOCシアター。ライトをやや落とし、バレーボール部の部員である仲良し4人組が喋るシーンが、吉原光夫さんの細やかなディレクションのもと、丁寧に繰り返されます。特徴的なのが、役者たちの口跡が明瞭で、あまり「いまどきの高校生」らしくない点。「高校生ワールドをリアルに再現してみせる」ことが目的ではなく、彼らの世界を借り、様々なスケールの「コミュニティ」に人間が縛られも、それによって支えられもしていることを表現しているかのようです。
背後にはギタリストが座り、折々に生演奏を聴かせるほか、子役の女の子が扮する「金魚娘」が歌うシーンもあり、「小さな世界」を多角的に膨らませる仕掛けがたっぷり。吉原さんによると「もともと響人では演劇だけのつもりだったけれど、最近のミュージカル界の傾向を見ているうち(自分でも)創ってみたくなった」のだそう。吉原さんにとって本格的なミュージカル創作への布石ともなりそうですし、いっぽう響人の活動は今回を区切りに、形を変えて行くことも考えているそう。一つのターニングポイントとなりそうな舞台です。
『金魚鉢』写真提供:響人
パズルのようなオブジェの上下周囲で展開する高校生たちのドラマ。「ラーメンどこに行く?」「(部活の)レギュラーなんで辞退したの?」等々、何気ない会話からそれぞれのキャラクターが見えてゆき、終盤、各自の本心の吐露であるソロ・ナンバーの連続へと繋がっていきます。
『金魚鉢』写真提供:響人
『金魚鉢』写真提供:響人
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