BEFORE AFTER

11月14~15日=シアター1010ミニシアター

『BEFORE AFTER』

『BEFORE AFTER』

【見どころ】

面白い企画が立ち上がりました。日本のカンパニー(ミュージカル座)が英国のクリエイター(俳優としても活躍する作曲家スチュアート・マシュー・プライス&脚本家ティモシー・ナップマン)に発注し、英国でワークショップを行いブラッシュアップした作品を、日本人の演出家(中本吉成さん)、日本の俳優(小林遼介さん、清水彩花さんら)によって、日本で初演するというものです。

登場人物は一組の男女。かつて恋人たちだった彼らは思い出の場所で再会するが、男は事故で記憶を失っていた……。韓国ドラマさながらの設定ですが、それが英国人の感性ではどんなストーリーとなり、さらにそれが日本人たちによってどう表現されるのか。国を超えたプロジェクトならではの、未知数の仕上がりに期待しましょう!
『BEFORE AFTER』星組キャストundefined写真提供:ミュージカル座

『BEFORE AFTER』星組キャスト 写真提供:ミュージカル座

【観劇ミニ・レポート】

筆者が観たのは星組キャスト。東宝ミュージカルアカデミーの出身で『ミス・サイゴン』『ラブ・ネバー・ダイ』等で活躍している染谷洸太さんと、ミュージカル座座員の田宮華苗さんのコンビです。幕開けは男女の出会い。しかし観客はまもなく、それが初めての出会いではなく、かつては恋人同士だった男女が思い出の地に引き寄せられ、再会したのだと理解します。ただ、男=ベンは記憶を失い、恋人=エイミーの顔を見ても何も思い出せない。エイミーはまだそのタイミングではないと思い、真実を言わぬまま二人は再び恋に落ちます。しかしベンはキャンバスに向かうことで、少しずつ過去の断片を思い出してゆく……。

かつて純粋に愛し合っていた筈の二人が、なぜ別れてしまったのか。徐々に真相に近づくスリルを持続しつつ、舞台は「過去」と「今」を交互に描いてゆきます。恋愛ミュージカルにありがちなキャッチーなメロディは使わず、理知的な旋律で二人に心象を語らせる音楽も面白く、二人芝居ながら携帯電話などの小道具を駆使し、それぞれの属する世界も醸し出して閉鎖的に見せない作りも巧みです。

一つだけ、さらによくなるかも?と思えた箇所を挙げるなら、二人の別離のきっかけであるエイミーの変節が、ちょっと唐突である点。後にその「事情」は判明するのですが、それまでエイミーがあまりにも悪女に見えます。それが狙いという部分もあるかもしれませんが、観客の心が離れてしまっては勿体ないので、前触れ的な要素を演出もしくは脚本で置いておくとスムーズかもしれません。
『BEFORE AFTER』星組キャストundefined写真提要:ミュージカル座

『BEFORE AFTER』星組キャスト 写真提要:ミュージカル座

出ずっぱりの出演者二人は「ほんとうは互いを求めている」ベンとエイミーになりきり、観客を引き込む演技。とりわけベンが自宅にエイミーを招き、「今日は彼女にイエスと言わせることができるかな」と期待に胸ふくらませるシーンでは、動きの多いナンバーを爆発的なエネルギーで歌う染谷さんが圧倒的です。他の舞台でも大きなお役で観てみたくなりました。

身近な恋人や伴侶の存在がより愛おしく感じられる、珠玉の舞台。今回の4回の公演きりと言わず、ぜひ定期的に上演して固定ファンを増やしつつ、様々な役者の魅力を引き出す場にもなっていってほしい作品です。

*次ページで『コンタクト』以降の作品をご紹介します!