内気な少年が「歌」に出会い、人生が輝き始める
『ミス・サイゴン』2012年公演 写真提供:東宝演劇部
「もともとは野球少年で、6歳からやっていたんですが、性格的には人前に出るのが苦手で、家でさえ“どこにいるのかわからない”と言われるほど喋らない子でした。母親がひどく心配していたんですが、8歳の時に母に連れられて『アニー』を観に行ったら、帰宅後“トゥモロー”をきれいな声で歌っていたそうなんです。歌をきっかけに、人の目を見て話ができるようになればということで、近所の音楽教室に通い始めました。
そこの先生に“こういうものがあるよ”と聞いて、母と一緒に童謡コンクールに出て“七つの子”を歌いました。“か~ら~す~、なぜ泣くの~”というあの歌ですね。そこでファミリー賞のようなものをいただいて、それがきっかけで歌が好きになりました。学校の音楽の授業で“山崎君、上手だからみんなの前で歌ってごらん”と言われて歌ったり、親戚の集まりで歌ってお小遣いを貰ったり(笑)。
そんなある日、歌の先生から“小椋佳さん主宰のアルゴミュージカルのオーディションがあるよ。男の子が主役らしい”とうかがって受けてみたら、3000人くらい子役が集まっていました。3歳からダンスをやってきたような子ばかりで、『アニー』の主役をやっていた子も4人ほどいたかな。“うわ、アニーの人たちだ……”と思いながら参加してましたが、演技もダンスもなんにも経験がないにもかかわらず、小椋さんが僕を主役に選んでくださったんです。
山崎さんの少年時代の舞台『フラワー』より。
*次ページでは山崎さんの人生を大きく変えた体験から“史上最年少マリウス”となるまでをお話しいただきます。