シチリアの風景を彩る不思議なサボテン
たわわな実をつけたインドイチジクはシチリアの象徴的な植物のひとつ
学術名的には、「オプンティア・フィクス・インディア Opuntia ficus-india」。オプンティアはサボテン科のウチワサボテン類に属します。まさにウチワサボテンの名の如く、ウチワのように丸く平たく、そして肉厚の葉のような茎節を縦横無尽に広げる姿は独特で印象的です。
それだけでも印象的なのに、その印象をさらに深くするのが、夏の終わりから秋にかけて。ウチワの淵のところに、赤やオレンジや黄色など、色とりどりの実がブツブツとつくのです!実ができる=花も咲きます。淵の周りに花が咲いてもさほど衝撃はないのですが、実をつけた姿はかなり不気味です(写真参照)。
食べ方にコツがいる?!手ごわい「フィーキ・ディンディア」
その実は、植物同様「フィーキ・ディンディア」と呼ばれ、シチリアでは晩夏から初秋の味覚として親しまれています。全身を鋭いトゲトゲで覆われた実は、剥くのが大変なため、市場やスーパーマーケットでは、「剥き身」の状態で売られていたりもします。それは、実の中がほとんど種!ということ。シチリア人に食べ方のコツを聞くと、「噛んだふりして飲み込む」だそうで、つまり、種は出さずに飲むこむというわけ。しかし、その種の固さと言ったら…。大量のサプリメントを水なしで無理やり飲み込むような感覚に襲われます。「モグッ、ングッ」と言った感じで、慣れないと味わうまでには至りません。
それでもシチリア人には、この実が大好きな人が多く、夏の終わりの食卓では本当によく登場します。日本人が納豆を好んで食べるのが、わからない!という外国人の気持ちがわからなくもない。そんな感覚を呼び起こす不思議な果物(?)です。
と、「フィーキ・ディンディア」に対する悪印象を綴っておりますが、あくまでも主観ですのであしからず。日本人でも「好き」と言う方には何人も会ったことがあります。トゲに種、なかなか手ごわい果物ですが、もし食べる機会があったら先入観なしにぜひチャレンジしてみて下さい!
ジェラートのフレーバーや料理にも
「フィーキ・ディンディア」は生の実のみならず、ジェラートのフレーバーや料理の素材としても扱われています。生の実に出会えなくても、その風味を体験する機会も多々あることでしょう。むしろ、種がない分食べやすく、しっかりとその味わいを楽しむことができます。また、シチリア全土で見かける「フィーキ・ディンディア」の中でも、名産地として知られるのは、島の南東側の内陸部にあるサン・コーノ。市場でもお値段少々お高めで売られています。素材にこだわるリストランテなどでは、「サン・コーノ産のフィーキ・ディンディア」の表記を目にすることもあるかもしれません。