1963年大ヒット007シリーズ第2弾「007ロシアより愛をこめて」
ロシアより愛をこめて(デジタルリマスター・バージョン) [DVD]
この映画は現在にまで続く007シリーズの2作目として作られたものです。
この当時は、まさに東西の冷戦の真っ最中。アメリカとソビエト(当時、現在のロシア)が真っ向から対立していた時代です。そういった時代背景から生まれた傑作のスパイ映画が007シリーズです。
主役のジェームズ・ボンドはイギリスの諜報部員。米ソ両国とは直接は関わり合いのないところに、物語が生まれる背景がありました。
そういった二極化が進む世界情勢の中で、ある意味自由に、思惑やアクション、そして大事なロマンスを盛り込んだところに、このシリーズの成功がありました。
そして、もちろん初代ジェームズ・ボンド役のショーン・コネリーの魅力も、世界的大ヒットへの足掛かりとなったことは言うまでもありません。
この物語では、直接的な世界情勢から一歩引いた美的感覚がお洒落な雰囲気を醸し出しています。イギリスの洗練された諜報部員であるボンドに対して、無粋で洗練されていないロシアの殺し屋の対比がいかしています。
どちらも女性が好きということでは、共通していますが、その違いは、オリエンタル急行での食事の場面で表現されます。
ボンドたちが魚料理の舌平目のグリルを注文するという場面で、ボンドは「テタンジェ・コント・ド・シャンパーニュ・ブラン・ド・ブラン」というフランスきってのシャンパンを注文します。
一方イギリスのエイジェントに成りすましたロシアの殺し屋は、赤ワインの「キャンティ」を注文します。このシーンが後に活きてくる場面になっています。
これは、我々観客にヒントとして提示されたシーンでもあります。魚料理、特に舌平目のグリルのようなあっさりとしたメインには、白ワインもしくはシャンパンが基本と言うルールを分かっていれば、すぐに変だと気がつくきっかけになります。
ここで、このロシアの殺し屋が注文した赤ワインが、もしも「ロマネ・コンティ」とまではいかなくてもブルゴーニュのものであったのならば、そこまでおかしいとは思われません。
でも、よりによって、イタリアの「キャンティ」(廉価で出回っているテーブルワイン)だったのです。ここは、少しワインを知っている者ならば、なるほどと思う場面のつくりになっています。
これだけではなく、このシリーズは大人の嗜みをくすぐる、ある種スノビズムともいえる趣向、遊びに満ちています。
程よいお色気と、子供の時分には気がつかない大人の趣向。そこがまた、このシリーズを観る楽しみになっています。
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そんな粋な映画、「007ロシアより愛をこめて」のテーマをさらに小粋にスウィングさせた演奏がコチラ!
カウント・ベイシー楽団「ベイシー・ミーツ・ボンド」より「ロシアより愛をこめて」
ベイシー・ミーツ・ボンド
このCDでの「ロシアより愛をこめて」は、カウント・ベイシー楽団により完全にカンザス・シティ・スタイルに変えられたスウィンギーなジャズになっています。
特に、ソロをとるテナーサックスのエディ・ロックジョウ・デイヴィスが聴きもの。エディ特有の暑苦しいソロにより、ロシアのイメージとは真逆の熱い演奏になっているのが可笑しいところです。
007ジェームズ・ボンドと言えば…
殺しのライセンスを持つ諜報部員。世界中をまたにかけ、日中はアクションにそして深夜にはロマンスにと激務をこなすジェームズ・ボンド。そのボンドがジャズ・ベーシストとしても活躍している?
実は、ジャズ界には同姓同名のジェームズ・ボンドというベーシストが存在しました。ジェームズ・ボンド(ジミー・ボンド)は1933年生まれでおもに西海岸でプレイしたプレイヤーです。
主な共演者はアート・ペッパーやジェリー・マリガン、チェット・ベイカーなどそうそうたる面々。ヴォーカルのニーナ・シモンのデビューアルバムでもサポートしている実力者です。007のボンドとまではいきませんが、ジャズ界ではなかなか名前の通ったボンドです。
このジェームズ・ボンドによる「ザ・ジェームズ・ボンド・ソングブック」は、映画の大ヒットに便乗して、同姓同名という、ノリで録ってしまった作品です。
THE JAMES BOND SONGBOOK
今回の仲間のエイジェントは、テナーサックスのハロルド・ランドやジェローム・リチャードソンなど凄腕ばかり。
さぞかし、完ぺきにミッションをこなすかと思いきや、そもそも志がお遊びのこの企画。全編にわたって、諜報活動とはほど遠い、中途半端なぬるい演奏に終始しているところがご愛嬌です。
12曲目最終曲の「ユー・オンリィ・リヴ・トゥワイス(007は二度死ぬ)」になってようやく乗ってきたエイジェント達。熱いアドリブが続く中、締めの最後のテーマに戻ったところでなぜか途中でフェイドアウトしてしまうというしまらなさ。
この致命的なミスは、本家ボンドなら、間違いなくシリーズが終わってしまう大失態と言ってよいでしょう。
CDの解説の部分には、おそらくはベースのボンド本人と思われる男性が女性のエイジェント風と二人で銃を構えている写真が載っています。なんとなくこの二人大丈夫か?と思えるほどのカッコ悪さも、やや残念。
それでもこのCDには、なぜか愛着があり、持っているだけでうれしい気持ちになる不思議な魅力があります。何しろ、話題性は群を抜いてキャッチー。その辺も、ジャズCDの楽しみ方として、一つのあり方かもしれません。
今回の懐かしい映画の中のジャズ、いかがでしたか?まだまだ映画の中にはジャズで取り上げられた作品が沢山あります。機会をみて、ご紹介をしていきますね。それでは、また次回お会いしましょう!
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