最近ではCGや特殊効果の進歩により、映画の中では現実世界では起こりえない物語を描くことも可能になりました。それはそれで、楽しいものですが、昔観た映画の中には、今日ではむしろ表現できないような大掛かりなセットやエキストラ、身体を張ったアクションが沢山ありました。

今回は、そんな昔懐かしい名作の中から、印象深いテーマをジャズにした名演をご紹介します。

1960年鬼才スタンリー・キューブリックのスペクタクル巨編「スパルタカス」


スパルタカス スペシャル・エディション [DVD]

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この「スパルタカス」は、後に「2001年宇宙の旅」などSF映画で有名になるスタンリー・キューブリック監督による、1960年制作のスペクタクル史劇です。実際にあったとされる奴隷スパルタカスのローマへの反乱を描いた壮大な物語です。


主演は、見事な肉体を持ち、あごに特徴のある当時の大スター、カーク・ダグラス。そして、イギリスの名優ローレンス・オリヴィエや二枚目スターのトニー・カーチスらが共演し、迫力のある男臭いドラマを展開しています。

ローマ軍によって退路を断たれたスパルタカスの反乱軍は捕えられ、最期には磔にされてしまうというストーリー。この悲劇のラストシーンは子供心に強烈なイメージとして残っています。

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そんな男の世界を描いた硬派な映画の中で、一時の涼風のようにひときわ美しく流れていたのが「スパルタカス愛のテーマ」です。そのきれいなテーマを、ジャズとして取り上げたのがコチラ!

ビル・エヴァンス ジェレミー・スタイグ「ホワッツ・ニュー」より「スパルタカス愛のテーマ」


ホワッツ・ニュー

ホワッツ・ニュー

この「ホワッツ・ニュー」は、ビル・エヴァンスとフルート奏者のジェレミー・スタイグと言う異色の組み合わせの1枚です。

ジェレミー・スタイグは乗ってくると「ウー」とか「アー」という声も一緒に発する、「グロウル」という奏法で有名なフルートプレイヤー。

フルートの音色と同時に発せられるくぐもった声が力強い印象を与えるその奏法は、まさにこのスペクタクル史劇の「スパルタカス」にピッタリと言えます。


ビルによる、いつもの美しい響きのイントロ。そして続いて出るジェレミーによる美しくも壮大なイメージのテーマが聴きものです。

ここでは、テーマのイメージを損なわないようにか、いつものグロウルではなく、短めのセンテンスでビブラートをかけ、切々と歌いこむジェレミー。志半ばで散ったスパルタカスの姿が重なります。

途中でジェレミーとビルのテーマが入れ替わり、そのまま両者による同時のインプロビゼーションに入ります。それはまるで映画の中で、それぞれの個性が有機的につながり、大きな一本のストーリーになっていくようなイメージです。

後半になって気持ちが盛り上がってきたところで、抑えていたグロウルも飛び出し、演奏にメリハリがつきます。

そして、エンディング。ジェレミーによる音色にならない息遣いのような効果音は、磔に散ったスパルタカスの無念を表現しているのかもしれません。映画同様、印象に残る名演です。

>>つぎのページではクリント・イーストウッドの初監督作品からのナンバー

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