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マンションの共用部は変えられる!?

マンション選びの格言のひとつ「変えられないところを重視せよ」。では、変えられる、変えられないの線引きはどこなのか。大胆にも共用部を変更した例を取り上げる。

坂根 康裕

執筆者:坂根 康裕

高級マンションガイド

 

「変(替)えられないところ」はどこ?

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はじめてマンションを買おうとしている人に、送られるアドバイスは数多い。「立地重視」、「街並みを買え」、「現地へは何度も足を運べ」。言い古されたものばかりだが、だからこそ普遍的ともいえる。そして、このメッセージもそうだ。「*変(替)えられないところを重視せよ」(*以下「変」に統一)

マンションの場合、変えられないところ、とはどこをさすのだろうか。

「立地」はその最たるものだろう。駅からの距離、周辺環境、生活利便施設の有無などは気に入らないからと言ってどうにかなるものではない。ややこしいのは建物。向きや眺望のように当然不変であるものを除き、一戸建てなら変えられることでも、分譲マンションでは無理なことがある。区分所有法(通称「マンション法」)や物件ごと(管理組合)の規約に細かく定められているわけだが、基本的に専有部以外は個人の意思で変更することは不可能だ。

例えば、住戸に入る玄関扉は室内側は専有部にあるため(色を替えたり)自由にできるが、共用廊下に面する側は共用部にあたるので勝手に変えてはならない。これは窓ガラスも同様。既存マンションで単板ガラスを複層ガラスにして断熱性を上げたいと思っても、自分勝手には変更してはだめ。許可なり、届け出なりマンションで定めている規約に従う必要がある。専用庭、バルコニーも共用部だから勝手に造作物などを設えてはいけない。

マンションの共用部は?

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では、共用部はすべて「変えられない」のかというと、それは正しくない。厳密にいえば「勝手に変えてはいけない」ということ。管理組合で話し合い、合意形成がなされれば、変更することは自由(もちろん法に抵触しない範囲で)。

最近は共用施設の充実した大規模マンションに人気が集まっているようだ。エントランスロビー、エレベーターホール、集会室といった定番に加え、大型キッチンを併設したパーティルームやホテルのようなインテリアを施したゲストルーム、またタワーともなれば上層階にビューラウンジや屋上を一部開放して誰もが眺望を楽しめる施設にしているケースもある。

だが実際に住みはじめると、イメージと実際のギャップが生じる場合もあるようだ。例えば物件のウリであったはずのコンシェルジュ(や夜間警備)の配置場所や時間の適正度合、または付帯施設が思ったほど利用されていないなど。それは、設計上の問題(例えば人の動線と施設のレイアウトのミスマッチ)から資産価値を上げるための改善など「マイナス解消」から「長所を伸ばす」まで様々なケースがあるようだ。

大規模マンションは合意形成が大変そう、と思われるかもしれない。たしかにかかるパワーが数十戸の管理組合と同じというわけにはいかないだろう。しかし、一旦組織のモチベーションと行動が好循環化すれば、億単位の予算を扱う大規模マンションだけに多大なるスケールメリットが発揮できる。それこそ老朽の度合いを問わずして、大胆な取り組みを成し遂げた実例は少なからず存在する。

例えば約800戸のタワーマンション(神奈川県川崎市)では、4年かけてトランクルームを増設したり、イメージ向上を図った植栽の全面改良を行うなど規模の利点をいかす一方で、エントランスホールに電子掲示板を設置したり、各階に防災倉庫を新設するなど東日本大震災後、即座に防災強化を図っている。

あえてコストを投下することで、施設(ハード)の魅力向上に成功した例もある。約1100戸の湾岸タワー(東京都江東区)では、フィットネスルームに無酸素運動のマシンだけだったものを有酸素運動マシンを追加パスポート制度を導入するなどルール(ソフト)の改良にも踏み切った。さらにバーだけだった眺望ラウンジにピザ窯やコンロを増設し、シェフの派遣も行う。結果、スポーツ施設利用者は昨対約1.5倍(2014年)、バーの売り上げは5年前(新築時)の約3倍に拡大した。

これらに共通しているのは大規模マンションであることと、築5年程度の建物だということ。課題が深刻化する前に先手先手で策を講じている点がポイントである。これからマンションを買おうとする人は、「変えられないところ」のなかでも「やり方次第で付加価値を高められるところ」を理解しながら検討すると、物件の見方も少し変わって見えてくるかもしれない。

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