ふたりで学ぶマネー術/ふたりで学ぶマネー術

エンディングノートでふたりらしく幸せに生きよう!

セミナーや研修で、介護や終活、セカンドライフに関する講演をすると、参加者の方からエンディングノートに関する質問を受けることが増えてきました。ここ数年、エンディングノートやエンディングに関する本も数多く出版され、セミナーも多く開催されています。今回は、エンディングノートと、終活を通して今をよりよく生きる、ということについても考えてみました。

平野 直子

執筆者:平野 直子

ふたりで学ぶマネー術ガイド

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最近よく聞く「終活」とは?

 
終活って、何から始めたらいいの?

終活って、何から始めたらいいの?


お盆、お彼岸の季節に合わせて、お葬式やお墓について取り上げた特集記事やテレビ番組をよく見かけます。その時、必ずと言っていいほど、「終活」という言葉も紹介されるようになりました。

「終活」とは、「より良く人生を締めくくるために準備をすること」や、「その準備を通して、残りの人生も自分らしく生きることを意識したり、活動をしていく」というような意味です。

具体的な方法としては、「家や身の回りの片づけをする」、「財産整理をする」「お葬式やお墓の希望を整理したり、前もって準備をする」、「万が一の場合に備えて、家族や親しい人に、伝えておきたいことを記録する」、「自分史を書く」など、さまざまな方法があります。

楽天インサイト「終活に関する調査(2019)」によると、終活をしたいと考えている人は、全体で約40%、「終活」をする理由は「家族に迷惑をかけたくないから」が約76%でした。
 

「終活」でしておきたいことは?

 
資産の把握や荷物整理、加入サービスの整理などは、今、暮らしている間も大切です。

資産の把握や荷物整理、加入サービスの整理などは、今、暮らしている間も大切です。


同調査によると、「終活」でしておきたいことの上位5位は、以下のとおりです。

第1位「財産整理」(62.5%)
第2位「家の中の荷物整理」(55.8%)
第3位「エンディングノート・遺書の作成
     (法的効力はないが、意思を伝えられるものの作成)」
(43.2%)
第4位「携帯電話など、加入サービスの情報整理やまとめ」(41.2%)
第5位「加入保険の整理・見直し」(39.7%)

さらに、年代別にみたものが下の表です。
 
楽天インサイト「終活に関する調査(2019)」より転載

楽天インサイト「終活に関する調査(2019)」より転載


「終活」というと、一般的にはシニア世代が考え始めるという印象がありますが、意外なことに、「財産整理」や「エンディングノート・遺書の作成」「加入保険の整理・見直し」について、20代の方の割合が高くなっていました。

特に「遺言書・財産分与の作成(法的効力があるものの作成)」や「大切な人へのメッセージ作成」「墓準備」などは、40代以上の層よりも20代の方が多くなっています。身近な人や自身の経験などから、その必要性を感じているのでしょうか。とても意識が高くて驚きました。

また、個人的には「飼っているペットの信託」も気になるところです。40代では、10%以上の方が、しておきたいことに挙げていました。「自分たちに万が一のことが起きたら、ペットの世話を誰に頼もうか……」という意味では、これもしっかり考えておかないといけないと思いました。
 

エンディングノートに書く項目は?

 
PCや携帯のデータ(デジタル遺産)も整理しなくちゃ……

PCや携帯のデータ(デジタル遺産)も整理しなくちゃ……


「終活」にしておきたいことの第3位だった「エンディングノート」……。年々認知度が上がってはいますが、楽天インサイトの前年の調査「終活に関する調査(2018)」によると、「用意していない」と回答した方が86%と、実際に作っている人は、まだ少ないようです。

「エンディングノート」とは、「人生の終末を迎える前に、自分の想いや希望などを家族などに伝えるためのノート」のことで、主な項目は以下のとおりです。

【主な項目】
・自分史
・感謝のメッセージ 
・家系図
・預貯金・保険などお金に関する情報
・看病・介護・延命措置等について
・葬儀や埋葬の希望
・友人・知人・ご近所リスト
・ペットの世話について  など


市販されている書籍のほか、NPO法人等によるエンディングセミナーや葬儀会社などで、配布されるものなどがあります。何冊か実物を見比べてみて、自分や両親が書きやすいと思うものを選ぶとよいでしょう。また、既製品にこだわらず、手書き派の方は、大学ノートなど、パソコン(IT)派の方は、Wordなどのテキスト形式で、書きたい項目を自由に書いてもいいと思います。

なお、エンディングノートは、遺言書と異なり、法的な効力はありません。遺産分割のことなど、相続対策をする場合は、正式な遺言書を別途用意する必要がありますので、ご注意ください。また、大切な個人情報が集約されていますので、管理には、十分ご留意ください。
 

両親の終活どうする?

 
まだ先のことだけど、万が一に備えて両親の希望は聞いておきたい……

まだ先のことだけど、万が一に備えて両親の希望は聞いておきたい……


「終活に関する調査(2019)」(楽天インサイト)によると、「終活」を始めたい年齢は、「60代」という方が最も多く(41.7%)、「70代」(23.6%)、「50代」(12.4%)と続きました。自身の終活を考えつつも、両親の終活について、気になるという方も多いのではないでしょうか。

実際、ガイド平野がライフプラン相談でお会いする方々の中にも、ご両親について、「まだまだ元気だけれども、年を重ねるに従って健康状態なども気になる」というご夫婦も多くいらっしゃいます。「万が一のことを考えて、両親の希望を聞いておきたいけれども、面と向かってはなかなか切り出せない……」という方も多いようです。

ある調査によると、親の終活について、「一緒に取り組んでいる」ことについて、「ない」と回答した人が47.4%と半数近くいるのですが、実施していることとしては、「持ち物の整理」(17.9%)、「お墓」(17.2%)、「介護」(15.0%)、「財産の整理」(14.8%)となっていました。(鎌倉新書「親の終活に関する意識調査(2018)」より)
 
鎌倉新書「親の終活に関する意識調査(2018)」をもとにガイド平野が図表作成

鎌倉新書「親の終活に関する意識調査(2018)」をもとにガイド平野が図表作成


一方、「一緒に取り組んでおかないと困る」こととしては、「持ち物の整理」(50.2%)に次いで、「財産の整理」(45.3%)が挙げられています。

そういえば、ご主人やお父様が突然亡くなられたしまった、という方から、「銀行や保険会社、証券会社など、どことどのような取引していたのかを全て調べなくてはならなくて、とても大変でした。」という話を複数件、聞いたことがあります。両親がいつまでも元気でいてくれたら一番いいのですが、万が一の場合や、病気等によって本人の判断能力が低くなってしまった場合に備えて、本人の意思や希望を聞いておきたい、と思うのでしょう。

両親に終活やエンディングノートを勧める場合は、「同僚や友人で急にお父様が亡くなられて、大変だった話を聞いたので」と、さりげなく話してみた方や、一緒に終活セミナーなどに参加してみた、という方もいらっしゃいました。30代~50代の方がエンディングノートを書く場合は、ご夫婦で一緒にエンディングセミナーに参加するのもよいですね。
 

自分たちの終活、エンディングノート、何から始める?

 
ボク達の面倒を見てくれる人についても、備えておいて欲しいワン!

ボク達の面倒を見てくれる人についても、備えておいて欲しいワン!


両親に対して、終活やエンディングノートを希望するだけでなく、自分たち自身についても、終活やエンディングノートの必要性を感じている人が増えています。

エンディングノートに書く項目については、先ほど紹介しましたが、全てを書こうとすると、結構なボリュームになります。最初のページから順番に書こうと思うと、途中で挫折してしまいそう、という方もいらっしゃいました。ここでお勧めしたいのは、優先順位の高いものや、本人が書きたいと思うところから、書いていくことです。

葬儀や墓に関する希望は、最近、「家族葬」や「墓じまい」、「散骨」「樹木葬」などが話題になっているので、比較的イメージしやすいかもしれません。所有財産等については、特にこの25年ほど、金融機関の合併も多かったので、古い保険証券や金融機関のカードを持っている方は、現在の金融機関名・支店名などが分かるだけでも、残された家族にとって、大変助かるのではないかと思います。
 

ハッピーエンディングを迎えるために

 
仕事も家族も自分も大切にして、元気に末長く幸せに暮らせますように!

仕事も家族も自分も大切にして、元気に末長く幸せに暮らせますように!

終活やエンディングノートを書くというと、「高齢の方や、闘病生活をされている方などが、万が一に備えてするもの」と思われる方もいらっしゃいますが、「若いうちや、健康のうちにこそ、準備が必要」と考える方も増えています。

病気で余命宣告をされた場合、限られた時間と辛い体調の中でエンディングの準備をしなくてはなりません。また、事故や災害などで、突然人生を終えることになってしまう、ということもあります。これは、健康な方でも、年齢に関係なく起こりうることです。近頃、生命の危険を伴う自然災害が急増していて、改めて無事に暮らせている、ということは、当たり前のことではないと痛感しています。

ガイド平野が、以前読んだ本で、大変印象的だったものがあります。末期がんなどの患者さんが受ける終末医療のお医者様、大津秀一先生が書かれた著書「死ぬときに後悔すること25」です。この本には、患者さんが亡くなる前に大津先生に語った「自分の人生を振り返って後悔すること」が、25項目にわたってまとめられています。例えば、「自分のやりたいことをやらなかったこと」「仕事ばかりで趣味に時間を割かなかったこと」「行きたい場所に旅行しなかったこと」などがあります。人生の先輩方が思い残したことを読むことで、改めて自分はどう生きたいか、を考えるきっかけになりました。

エンディングノートを書くことで、万が一に備えるだけでなく、人生の終わりをイメージして、自分たちにとって、悔いのない人生とはどういうものなのか、改めて見つめ直すことができます。その結果、今をよりよく生きることにも繋がるのではないか、と考えます。

夫婦が、与えられている時間を大切に、今できることを精一杯幸せに暮らしていくためにも、エンディングノートなどのツールを活用して、ふたりがそれぞれどのような人生を送りたいのか、意識を共有し、これからのライフプランに盛り込んでみてはいかがでしょうか。

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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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