不動産売買の法律・制度/不動産売買ワンポイントアドバイス

隣地との間に越境問題がある家の対処法

隣地との間で屋根や構造物、樹木などが越境しているケースは意外と多いものです。まだ感情的なトラブルなどが生じていなくても、売買にあたってはその予防措置をしておくことが欠かせません。越境問題がある家を購入するときの対処法などを考えてみましょう。(2017年改訂版、初出:2014年9月)

執筆者:平野 雅之

【不動産売買ワンポイントアドバイス No.053】

隣地へ越境した屋根

隣地との間の越境問題は、すぐに解消することが困難なケースも多い


敷地境界をめぐって隣地との間でトラブルがあるとなかなか厄介です。境界そのものの位置に関する争いだけでなく、越境をした構造物や樹木などに関する揉めごとも少なくありません。

また、敷地境界線上、あるいは境界付近に造られた塀や擁壁の所有、維持管理、補修、費用負担などをめぐってトラブルが生じることもあるでしょう。

住宅の売買にあたり、隣地から何らかの越境があれば「その事実関係」が重要事項として宅地建物取引士から説明されます。越境をされている場合だけでなく、売買対象物件が隣地へ越境している場合も同様です。

隣地所有者などとの間で現実にトラブルが起きていればその事実も合わせて説明されるでしょうが、このようなときは問題が解決するまで購入を見合わせることも考えなければなりません。

越境した樹木の落葉によって屋根が劣化する、雨樋が詰まるなどといった被害が実際に生じているときも、売買をする前にその問題を解消させておくべきです。

しかし、越境の事実はあっても感情的なトラブルにはなっていないことも多いものです。物件の売主と隣地所有者などとの関係が良好で、お互いに容認し合っていたり、これまでとくに問題提起していなかったりする場合もあるでしょう。

ところが、売買によって当事者が代わることで急に問題が起きる場合もありますから、何らかの越境事実が生じているのなら、売主から「今までトラブルにはなっていない」と説明されても安心はできません。

隣地へ越境をしている物件を購入して入居した途端に、隣地の所有者から「越境している屋根を切り落とせ」「越境している塀を取り壊せ」などといった無理難題を突きつけられるケースもあるようです。

とくに屋根や構造物などの越境事実があれば、売買契約を締結する前の段階で「越境にどう対処するのか」をはっきりとさせておくことが大切です。

現実には売主と隣地所有者または借地人との間で、合意書(または念書、覚書、確約書、協定書など)を交わしておくことが一般的で、買主が融資を受ける金融機関からこのような文書の提出を求められる場合もあります。

その文書には次の項目を盛り込んでおくことが欠かせません。
□ お互いに敷地境界線と越境部分の状況を確認したこと
□ 越境している側は、その負担において将来の 建替えの際などに越境状態を解消すること
□ お互いに物件を第三者へ譲渡した際には、それぞれの買主へ合意内容を承継させること

越境しているのが配管のときなど、その内容によっては「将来の建替えのとき」ではなく、何らかの機会を設定したうえで「越境の解消に努める」としてもよいのですが、いずれにしても「すぐに解消すること」を求めれば問題が大きくなるばかりでしょう。

ちなみに、竹木の枝が越境して落葉などによる何らか被害が生じている、またはその恐れがあるときには、竹木の所有者に対して切除を申し入れできることが民法に規定されています。

しかし、これはあくまでも請求をするだけで、勝手に切り落とすことはできません。そのため、相手が請求に応じなければ裁判をするしかないのです。

また民法では、隣地の竹木の「根」が境界線を越えてきたとき、越境部分を相手の承諾なしに切除することができるとされていますが、勝手に根を切り落として竹木を枯らせば損害賠償の対象になることもあるようですから、まずは相手としっかり話し合いをすることが大切です。


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隣家の屋根が越境していたら……?
擁壁の越境トラブルはなぜ起きる?

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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