壮 一帆 花組時代
2006年、花組へ組替えします。それまで爽やかな青年役の多かった壮さんですが、この花組時代、個性的な役を次々と与えられ、舞台人としての引き出しを増やしました。『ME AND MY GIRL』では、おじ様のジョン卿と、色っぽい女、ジャッキーを役替わりで好演。『相棒』の神戸尊、『麗しのサブリナ』のデイヴィッド・ララビーなど、トップスター・真飛聖さんが演じる役との対比をはっきりと出したおかげで、作品全体の面白みが増しました。
驚かされたのが『太王四神記』の大長老プルキル。初の悪役というこの役を、観ていて気持ちのいいぐらいのワルに徹しての熱演でした。
また項羽と劉邦の戦いを描いた『虞美人』では、壮さん扮する劉邦が登場するとパッっと明るくなり、重く暗くなりがちなストーリーを救いました。
そして主演を務めた『オグリ! ~小栗判官物語より~』の小栗判官。精悍で神々しく、自信に満ち溢れた輝きを放ち、そこがバウホールとは思えないほど、劇場が大きく感じたものでした。
トップスターが同期生の蘭寿とむさんに変わってからも、魅力的な役が続きます。
主演を演じた『カナリア』では、生真面目でピュアな悪魔、ヴィムを熱演。
『サン=テグジュペリ』では、爽やかに演じた友人思いのギヨメも良かったですが、「星の王子様」のシーンでのキツネが最高。ほのぼのしていて伸び伸びしていて、ちょっぴりアクもあって、何とも可愛い。こうしたコミカルな役も、明るい壮さんにぴったりでした。
そして『ファントム』のジェラルド・キャリエール。息子エリック(ファントム)への深い愛、エリックに自分が父親だと告白する銀橋での歌、我が子を撃つという苦悩など、すべての情感が素晴らしく、深く包み込む温かさを感じさせたキャリエールでした。
壮 一帆 雪組トップスターへ
同期生が、また下級生がトップとなっていく中、実力もスターとしてのオーラもあり早くから注目されていたにもかかわらず、二番手時代が長く、なかなか背負えなかったトップスターの羽根。入団17年目という遅咲きではありますが、雪組に戻ってのトップスター就任は、壮 一帆ファンだけではなく、宝塚ファンみんなが「待ってました!」と喜んだものでした。
トップスターお披露目公演は藤沢周平「蝉(*)しぐれ」が原作の『若き日の唄は忘れじ』の牧文四郎。強がる様が可愛い16歳から、ふくを守る包容力が溢れる武士となるまでを溌剌と演じました。(*は虫へんに單の旧字体)