途中でプレゼンが止まってしまった場合、先ほど何を言ったか、あるいはこれから何を言おうとしていたかを忘れてしまったのかもしれません。程度の差はありますが、思考が途絶する事は思考障害の症状の一つです
そんな時、誰かに後ろから肩を叩かれハッと我に返ると、自分はいったい何を考えていたのか見当がつかないということもあるでしょう。実は、これは「解離症状」と呼ばれる精神症状の一つです。
今回は、うつ病、躁うつ病、そして統合失調症など、心の病気で時に見られる「思考障害」の症状を詳しく解説します。
思考の2つの側面……プロセスと内容
人が物事を考えるという事は、いったい何を意味しているのか?実は人の思考には、頭に浮かんできたアイディアや観念を結び付けて、一つのまとまった思考にしていく「思考の様式(プロセス)」、その時実際に何を考えていたのかという「思考内容」……この2つの側面があります。
「思考内容」に問題が生じる例として、うつ病では悲観的あるいは被害的な考えが頭に浮かびやすい傾向があります。例えば「職場の人は自分の事を重荷に感じているのではないか」といった事ばかり考えてしまうこともあるでしょう。
躁うつ病では躁状態になると、思考内容は「自分は何をやっても、うまくいきそうな気がする。よし、○○をやってみよう」など、誇大的になりやすい傾向があります。また気持ちの高揚は頭の回転を早め、次から次へアイディアが浮かびやすくさせますが、同時に話すスピードも上がり、周りの人には話の内容が次から次へ、めまぐるしく変わっていくような印象を与えてしまう可能性もあります。
統合失調症では、場合によっては思考の様式と内容との両方に何らかの問題が生じている場合もあります。例えば、「テレビはどの番組をよくご覧になりますか?」と質問され、「テレビの中の人が自分に話しかけてきます」と答えた場合、その答えは質問の直接的なアンサーになっていない事に気付きます。その時、回答者の頭に浮かんだ考えは、「見ている番組は何か?」という質問に答える方向にプロセスされておらず、思考内容も非合理な内容になっています。
話がまわりくどい、的外れな答え方をしやすい……
思考障害的な症状は、誰でも時に知らず知らず出現させている可能性があります。気分が冴えないと頭の回転はスローダウンしやすく、頭に浮かぶアイディアそのものも少なくなりやすいものです。そんな時は、何か厄介な問題事を抱え込んでいたとしても、普段なら見えるはずの解決策がなかなか見えてこないこともあるでしょう。また、日ごろから話がまわりくどくなってしまう方もいると思います。その原因は多々あるでしょうが、自分の言いたい事をどうしても相手に伝えられないほど話がまわりくどくなっている場合、頭に浮かんできた思考をプロセスしていく過程で何らかの深刻な問題が生じている可能性があります。
思考障害的な症状が急に現われたら、病院受診も考慮してみて!
思考障害的な傾向があったとしても、自分にそうした傾向がある事をはっきり認識する事はなかなか少ないものです。でも他人ならば、何らかの問題があることにすぐ気付きます。誰かから話の周りくどさを指摘されるような事があった場合、軽く受け流す前に、自分のそうした傾向が日常生活に何らかの支障を及ぼしていないか、自分自身を見つめ直してみる事も良いかも知れません。
ただ、特に注意したいのは思考障害的な症状が急に出現した時です。場合によってはアルコールなど中枢神経系に作用する薬物、あるいは脳血管系の問題などを反映している可能性もありますので、病院で精査されてみる事もぜひ考えてみてください。