「つまらぬいさかいでお互い袂を分かつよりも、バンドのブランド価値を守ることの方が音楽ビジネスにとして大きな利益をもたらすことになる」。ソロ活動が思ったほどの成功に至らなかったミックは、ポピュラー音楽界きってとも言われるビジネスセンスで、既に確立されていたストーンズのワルで不真面目な印象とベロマークが持つ多大なブランド価値に改めて気づいたのです。そしてキースを説得しました。「ストーンズでなければ得られないモノを大切にしようじゃないか」。キースもまたミック同様、この間ソロ活動をしていたからこそ、この申し出に理解を示したと言われています。
ビートルズのブランドを逆手に
その戦略は、バンド解散によってブランド価値の大部分を放棄したビートルズの面々を、反面教師として学んだものでもあったのでしょう。以降のストーンズは、王道ロックバンドとして従来以上にワルで“不真面目”の象徴ベロマークを前面に立て、どこまでも優等生ビートルズの真逆を行く戦略で、ソフト・ワル路線のブランド化を徹底します。Tシャツだけでも数えきれないほどのデザインが
ローリング・ストーンズのブランド確立のポイントは以下の3点です。
(1)業界トップのビートルズと好対照な印象付けをとることで、有力他人ブランドとの対比という形でレバレッジ的に自己のブランドの確立を成功させたこと。
(2) ブランドイメージづくりのシンボルとなるビジュアルを早い段階から用いてきたこと。
(3)彼らの体型、服装等のルックスも含め、一貫してブレることのないブランド管理が継続されていること。
メンバーの大半が70歳を超えた今のストーンズは、実際にはワルでも“不真面目”でもありません。しかし、長年のストーンズ・ブランドよって作られたイメージをベースに、「歳をとっても、ワルで“不真面目”=かっこいい」という評価が今の彼らの圧倒的な人気を支えているのです。ストーンズのブランド戦略は、バンド消滅後も長く続くであろう揺るぎないものになったと言えるでしょう。消費者向け企業のブランド・マネジメントにとって、大いに参考になる事例ではないでしょうか。