純資産総額第1位は難しい?

2014年7月末の株式投資信託の純資産残高は70兆990億円と、2007年10月末の69兆681億円を上回り、6年9ヵ月振りに過去最高を更新しました。日本株の主要株価指数は昨年末の高値を更新していないことから、日本株ファンドの人気は低迷していいましたが、海外の株式や債券で運用される投資信託が人気を集めたのがその要因と言われています。

2014年に入ってから、資金流入額で一人勝ち状態なのは野村アセットマネジメントが運用する「野村ドイチェ・高配当インフラ関連株投信(通貨選択型)米ドルコース(毎月分配型)」で、同年7月までで6246億円もの資金流入があり、2014年8月19日現在で約1兆1253億円の規模となり、純資産総額は第3位まで躍進しています。

純資産総額第1位が視野に入りつつあるのですが、後ほど解説するファンド全体で1兆4500億円規模になり、投資対象市場の流動性等を総合的に勘案した結果、運用資産規模を適正な範囲に維持するため、2014年8月30日以降、新規申し込みが一時停止となることが決まりました。

米ドルコースに人気集中

同投信は、世界各国のインフラ関連企業の株式および米国の金融商品取引所に上場されているマスター・リミテッド・パートナーシップ(MLP)等を実質的な主要投資対象とし、カナダの金融取引所に上場されているインカム・トラストにも実質的に投資が行われています。

米ドルコースのほか、円コース、豪ドルコース、ブラジルレアルコース、通貨セレクトコースがあり、各通貨、毎月分配型と年2回決算型があります。通貨セレクトコースは、投資対象とする外国投資信託の投資顧問会社が選定した通貨になります。年2回決算型にはマネープールファンドもありますが、スイッチングは毎月分配型同士、あるいは年2回決算型同士はともに可能ですが、毎月分配型から年2回決算型(その逆も)へのスイッチングはできません。

収益の源泉は、豪ドルコース、ブラジルレアルコース、通貨セレクトコースは投資対象資産の利子・配当等収入、値上がり(値下がり)+為替取引によるプレミアム(コスト)+為替差益(差損)、円コースは投資対象資産の利子・配当等収入、値上がり(値下がり)+為替取引によるプレミアム(コスト)、米ドルコースは投資対象資産の利子・配当等収入、値上がり(値下がり)+為替差益(差損)となっています。

昨年あたりまでならば、通貨選択型で人気を集めたのは高金利通貨のブラジルレアルコースか豪ドルコースでずが、野村ドイチェ・高配当インフラ関連株投信(通貨選択型)の毎月分配型では米ドルコースが最も人気を集めています。2014年7月末基準のマンスリーレポートによれば、毎月分配型の米ドルコースの純資産総額は約1兆496億円であるのに対し、第2位のブラジルレアルコースでも約1507億円しかありません。資金流入=人気は一本かぶりと言えそうです。

運用益は先細りになる可能性あり

米ドルコースが人気なのは、1万口当たりの分配金が最も高いからと言えそうです。2014年7月の決算期には、米ドルコース=250円、円コース=40円、豪ドルコース=200円、ブラジルレアルコース=130円、通貨選択コース=150円となっています。

毎月の分配金は米ドルコースが1番高いことから、米ドルコースに人気が集中していると言えますが、米ドルコースの利益の源泉には為替取引によるプレミアム(コスト)がありません。また、投資対象株式等の配当利回りは4.1%しかないことから、毎月の分配金の源泉は株式の値上がり益、設定当初(2010年10月28日)からの為替差益が中心と考えられます。やや強引に分配金利回りを計算すると年間の分配金3000円(年間)÷基準価額(1万3877円=2014年8月19日)=21.62%となるからです。

しかし、2014年に入ってからは円安/外貨高が進んでいないことから、さらなる円安が進まない限り為替差益は先細りの可能性があります。為替差益が先細りになれば、勢い投資対象株式の値上がり益への負担が大きくなると考えられ、毎月の分配金の源泉も厳しくなる気がしてなりません。

やや古いですが、2014年3月期決算後の運用報告書を見ると、ほとんどの期は分配金が当期利益で全額賄われていますが、翌期繰越分配対象額は1万口当たり5025円です。仮に当期利益0円が続いたら、250円の分配金を賄う原資は20ヵ月しかないことになります。

当期利益0円が続くことはないでしょうが、収益の源泉に先細りの可能性がある以上、今後も潤沢に翌期繰越分配金対象額が積み上がるとは言い難い気がしてなりません。

新規募集が一時停止となることが決まっているため大丈夫かと思われますが、分配金が高額であることから人気の投資信託ではあるものの、新規の購入には慎重になった方がよい投資信託と思えます。既に保有されている投資家も、これまでのような高い分配金が支払われ続けると楽観視するのは少し控えたほうがよい気がします。
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