第3位 ジャズピアノのヴァーチュオーゾ オスカー・ピーターソンのヴォーカル 「ウィズ・リスペクト・トゥ・ナット」より「イッツ・オンリー・ア・ペイパー・ムーン」
With Respect to Nat
最初は、しつこいお客のリクエストを断り切れずにしぶしぶ歌い始めたというナットの逸話とは違い、オスカーはそもそも弾き語りで仕事をしていました。それも、ナットに似ているという、ややモノマネの入った営業の仕事です。声といい、歌い回しといい、誰もが驚くほどの出来です。
あまりに似ているので、ご本人のナットから「歌はやめてくれ」と言われたという話が残っています。ナットもピアノでの弾き語りが得意でした。そこで、大人なナットが、オスカーに歌をやめろといったその後で、「そのかわり、ぼくは金輪際ピアノは弾かないよ。ピアノは君に任せるから、歌はぼくにまかせてくれ」と言ったというのです。
その尊敬する大先輩のいいつけをしっかり守り、オスカーはジャズピアノの第一人者として押しも押されぬ地位を築きました。ナットは、ヴォーカルとしてポピュラーの世界でも大成功をおさめたのは言うまでもありません。
このCDでは、歌を封印していたオスカーのもとに、ナットが亡くなった時に追悼盤として話が来て、実現したものです。ジャズの世界では、似ているのはあまり感心されることではありません。それでもこの時ほど、ナットに似ていることを誇らしく思ったことはないと、後にオスカーは述懐しています。
「イッツ・オンリー・ア・ペイパー・ムーン」は、ナットの成功のきっかけになったオハコ中のオハコ。両者を聴き比べするのは、やぼなので、ここはオスカーのナットへの思いを感じながら、聴き入るのが良いでしょう。とはいえ、やはりそっくりな歌に、オスカーのナットへのリスペクトを感じる演奏です。
Amazon
そのオスカーのピアニストとしての代表作がコチラ!
ナイト・トレイン
黄金のトリオと呼ばれたベースのレイ・ブラウンとドラムのエド・シグペンによる名人芸。表題曲の「ナイトトレイン」の迫力!おススメです。
次は、録音スタジオに置いてあったピアノを弾いているうちに、本職の録音を忘れたジャズメンの話です!
Amazon