大規模なマンションでも、ほとんどの場合各専有住戸は地域電力会社と100Vなどの低圧で受電しているはずです。
しかしながら、2005年の電気事業法の改正によって、建物全体の受電容量が50kw(ファミリータイプの住戸で40戸程度に相当)以上であれば、専有部分を含めて高圧で一括受電することが可能になりました。
ただ、この高圧一括受電のしくみやメリットの本質については、あまり正しく認知されていないのが実情です。
その背景として、分譲マンションについては「一括受電サービス業者による電気料金削減プラン」という商品がいち早く普及し始めたという事情もあります。
マンション管理士としては、本来の一括受電スキームとサービス業者のスキームとの相違点を含めて正しく理解したうえでコンサルティングを行う必要があります。
高圧一括受電のしくみと効用
高圧一括受電とは、マンション管理組合が自ら事業者となって建物全体の電気をまとめて安く購入した後、自らの変電設備を使って共用部分や各専有住戸に低圧で配電することを言います。(右図参照)マンション全体で高圧受電すると、電気料金が約3割安く購入できるので、共用部分の光熱費がまず3割下がります。ただ、重要なのはその先です。
それは、専有部分の電気料金も共用部分と同様に3割安く購入しているという点です。したがって、管理組合が各住戸に従来の電力会社の料金価格で販売すれば、その差額分がそのまま管理組合の売電収益になります。しかも、その収益に対して課税されることはありません。
全体の経済効果としては、専有部分の電気料金の方が共用部分よりもはるかに大きいので、専有部分の差益分で共用部分の負担がなくなるほどのインパクトがあります。
しかも、そこで得られた収益の使い道は、修繕積立金の増額や管理費の減額に充てるなど、管理組合の裁量で決めることができます。
高圧一括受電の条件と負担
ただ、高圧一括受電するには、電力会社に代わって自ら受変電設備(キュービクル)を所有する必要があり、これに相応の投資が伴います。同様に、各専有住戸に設置されている検針メーターやブレーカーも一旦撤去して設置し直さなければなりません。また、設置後の保守点検や更新についても、自らの負担と責任で行っていくことになります。
また、日常面の変化として、管理組合が自ら事業者になるという建付けのため、各専有住戸の電気使用量の検針から電気料金の出納請求まで行う必要が出てきます。
ただし、こうした設備の保守点検や検針・出納請求業務については、専門業者に委託することが可能です。
また、設備に関する初期投資については、その後の保守点検、出納・請求業務の委託費の負担を加味しても、電気料金の削減効果で7~9年程度で回収できます。(ただし、回収効果の試算については個別物件毎に調査が必要です。)
次ページでは、一括受電サービス業者のスキームやその留意点などについてご案内します。