2. 志望校ってどんなふうに決めればいいの?
保護者の方と面談をしていると、偏差値表に横線を引いて「このレベル以上の学校でないと進学させるつもりはありません」とおっしゃる方に時々出会います。もちろん偏差値は学校の価値を測るひとつのスケールですし、親心として少しでも優秀な学校にわが子を入れたいと考える気持ちは理解できます。しかし一方で先を見通した時に、果たして偏差値という価値基準が将来どれほどの意味を持つのか、疑問を感じざるを得ません。ちょうどタイムリーな話題として先日、一橋大学が卒業単位に海外留学を入れると発表いたしました。つまり海外留学を経験しないと事実上卒業できないシステムになるわけです。グローバル化が進み、英語ができないと社会に出てから役に立たないような時代になりつつあります。そして大切なことは、大学の教育システム変更の潮流が大学の入学試験のやり方に影響を与え、それが中学受験まで下りて来るのに少し時間がかかるということです。もしかしたらお子さんが高校を卒業する頃には、今の偏差値表における学校の勢力図が、大きく変容しているかもしれないのです。
志望校選びで大切なことは、保護者の皆さまが通って嬉しい学校を選ぶのではなく、お子さんの将来を見据えて、通わせたい学校を選ぶということです。中学受験をさせる原点に今一度立ち返って、「誰のための中学受験なのか」をもう一度考え直して欲しいと思います。
では具体的にどんな学校を選ぶべきなのでしょうか。私はやはりキーワードは「グローバル化」だと思います。ネイティブスピーカーが常駐しているのか、英語の授業時間数は多いのか、海外留学制度は充実しているのかなど、英語教育に力を入れているかどうかをチェックされるとよいでしょう。
もう一つ大切な視点として忘れてはいけないのが、相性の問題です。中高一貫校の場合、お子さんが6年間通う学校ということになります。相性が合わないと、とてもつらい中学・高校時代を送ることになってしまいます。活発なお子さんなのに物静かで落ち着いた学校に入学してしまうと、窮屈な思いをしてしまうでしょうし、おとなしいタイプのお子さんが元気なお子さんの多い学校に入ると、自分の居場所がなかなか見つけられないかもしれません。
相性が合うかどうかを判断するにはどうしたらよいでしょう。もちろん学校に行ってみるのが一番良いですが、たとえば文化祭などの場合は普段とは違った姿を見せている場合もありますので、注意が必要です。もっとも簡単な方法は、実は過去問です。過去問には「こんな生徒が欲しい」という学校側の希望がたくさん盛り込まれています。よって過去問との相性が良ければ、その学校との相性も良いといえるのです。
時々、作文とか記述がとても嫌いなのに御三家を目指しているお子さんを見かけます。でも御三家が記述中心の出題なのは、入学後にレポート提出などをたくさん課すからなのです。ということは記述が好きではない生徒が御三家中に入学すると、入学後に苦労することになってしまいます。
過去問演習をすることで、その学校との相性を測るとともに、合格するための訓練にもなりますので、まさに一石二鳥です。また過去問をやりこむことで、無理やり志望校に自分の相性を近づけていくことも可能なのです。9月からの過去問演習、是非頑張ってください!