『タイトル・オブ・ショウ』観劇レポート
“多層構造”を自由に行き交う、リアリティ・ショー的ミュージカル

『タイトル・オブ・ショウ』写真提供:東宝演劇部

『タイトル・オブ・ショウ』写真提供:東宝演劇部

ミュージカル作家のジェフとハンターが、女友達のスーザンとハイディを巻き込んでミュージカルを作ってゆく。その過程をドキュメンタリー風に描いた『タイトル・オブ・ショウ』はニューヨークでの上演の際、ジェフたち当人が演じることで、それがまるで舞台上でリアルタイムに起こっているかのような効果が生まれ、好評を博したそうです。

この作品を“本人”でなく役者が演じるとなると、登場人物は明確に「役」と化し、“リアル感”はおのずから薄れますが、このハンデを逆手にとったのが今回の日本版。翻訳・訳詞・演出の福田雄一さんは浦井健治さん、柿澤勇人さん、玉置成実さん、佐藤仁美さんという4人の出演者自身の「地」や「経歴」を盛り込み、「ミュージカルという虚構世界」と「ジェフたちのリアルな世界」を掛け合わせた本作に、さらに「日本人出演者たちのリアルな世界」を掛け合わせてみせています。
『タイトル・オブ・ショウ』写真提供:東宝演劇部

『タイトル・オブ・ショウ』写真提供:東宝演劇部

どんなミュージカルを作るか、という談義のなかで挙げられるのは、ジェフたちが失敗作だと思っている、いくつかのブロードウェイ・ミュージカル作品。もともとの台本にあるネタです。ブロードウェイにも詳しい観客がくすりと笑っていると、東京で今、上演中の作品も差し挟まれ、「それなら分かる」とばかりに笑い声が倍増。さらには浦井さんや柿澤さんの経歴も容赦なくやり玉に挙がり、この人たちはジェフ&ハンターなのか、浦井&柿澤なのかが曖昧になってきます。後半にはこの「自分たちは誰なのか」さえネタとなり、「ジェフ自身であり浦井自身でありミュージカルの役であり……」という多層構造が明らかに。この、いくつもの世界が重なり合い、自由に行き来をする感覚こそが、今回の日本版の「楽しみどころ」であると言えましょう。
『タイトル・オブ・ショウ』写真提供:東宝演劇部

『タイトル・オブ・ショウ』写真提供:東宝演劇部

“日本ネタ”の中にはかなりきわどい笑いもありますが、浦井さんたちの会話は終始無邪気に、テンポよく進行。原則的には台本通りであるものの、日々、彼らによる多少のアドリブも加わっているようです。ミュージカル創作の困難さを歌ったナンバー「くたばれバンパイア!」や、フェスティバル参加後の不安感の中で人間関係が悪化する描写が、笑いに傾きがちな舞台にほろ苦さを加え、最後に「100人の人が9番目に好きなものより9人の人が大好きなものを目指したい」というモノづくりへの思いが語られ、その瞬間にジェフたちと浦井さんたち、そして観客の思いが一つになる。それまで曖昧に、幾分ずれて重なっていた世界がぴしっと揃って終わるという、心地よい終幕です。
『タイトル・オブ・ショウ』写真提供:東宝演劇部

『タイトル・オブ・ショウ』写真提供:東宝演劇部

いずれもチャーミングという共通点はありつつ、浦井さんはちょっと人のいいリーダー格、柿澤さんは甘えん坊の次男タイプ、玉置さんはキュートな天然、佐藤さんはさばけた姉貴と、それぞれの地を最大限生かした?かのような居方で、いずれも活き活き。ファンたちの期待も決して裏切らないショー、いやショウだと言えるでしょう。







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