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中学受験の算数の勉強法とは?陥りがちな誤解3つ!

今回は、中学受験の算数勉強法について、3つの誤解を挙げそれぞれの正しい方法についてお話ししたいと思います。中学受験の世界では、間違った学習法が正しいと信じられて採用されてしまっていることがよくあります。算数の勉強法について今一度考えましょう。

宮本 毅

執筆者:宮本 毅

学習・受験ガイド

中学受験の算数勉強法の誤解3つ! 親や塾講師も勘違い!?

中学受験の算数 勉強方法

算数ってどうやって鍛えればいいの?

算数の苦手を克服すべく、従来の間違ったやり方にメスを入れ、算数の正しい学習法をお伝えしたいと思います。
     

中学受験の算数勉強法の誤解1:地道な計算練習はイラナイ!

勉強方法の誤解1つ目は、「算数は思考力やヒラメキがモノを言う科目だから、地道な計算練習などはしなくてもよい」というもの。これは保護者の皆様と言うよりも、子ども達が勝手に思い込んでいる勘違いですね。特に「うちの子、算数のセンスはあると思うのだけど、思ったほど成績はよくないのよね」というお心当たりのある方は、お子さんがこう勘違いしている可能性が非常に高いです。

確かに算数は、その科目の性質上、「センス」や「数感」といったものが、成績に大きく影響を及ぼす科目です。それゆえ、計算練習などの地道なトレーニングは軽視される傾向にあります。小4くらいまでは、それでも、センスだけで何とかやれてしまうのですが、学年が進むにつれて、計算力がないとできない問題が出てくるようになります。
斜線部分の面積を求めよ

斜線部分の面積を求めよ

上の問題を見てください。これは武蔵中学の平成16年の算数の問題です。図形の転がり問題ですので、特に難問というわけではありません。しかし途中で、3.14と分数がからむ複雑な計算をしなければならず、計算力がなければ正解できないつくりとなっています。

センスはあるのに、算数の成績が伸び悩んでいる生徒の多くは、実は計算練習を地道にやることを疎かにしているせいで、せっかくのセンスを活かしきることができず、非常にもったいない状態となっているケースがあるのです。

毎日計画的に計算練習を積んでいけば、必ず効果はあがります。是非、面倒くさがらず、取り組んでみてください。
 

中学受験の算数勉強法の誤解2:解法パターンを丸覚えすればよい

勉強方法の誤解2つ目は、「算数だって暗記科目。解法パターンを丸覚えさえすれば、算数の力は上がるはず」というもの。中学生になると、方程式や様々な公式を学びますね。それを覚えるのに苦労した方もいらっしゃると思います。そのイメージがあるせいか、算数も暗記科目であると捉え、同じ問題を何度もやらせて解法パターンを徹底的に覚え込ませようとする保護者の方は、実はとても多いです。

算数も学習のひとつですから、覚えるということと全く無縁ではありません。確かに解法パターンをみっちり覚えていけば、成績は一時的に上がります。何しろ週テストや月例テストでは、その期間に習ったことがそのまま出題されますから、解き方さえ覚えていれば、点数は取れるようになります。ところが、そうやって鍛えた生徒は、範囲のない実力テストや外部模試では、全く力を発揮することができなかったりします。

なぜこのようなことが起こるのでしょう。原因は「思考の硬直化」です。「こう聞かれたときはこう答える」というパターン学習を繰り返すと、脳は定型的な質問に対しては即座に正確に答えられるようになりますが、問題の表現を変えられたり違った切り口で問われたりしただけで、途端に反応できなくなってしまうのです。解法パターンを繰り返しおこなってしまうと、この「思考の硬直化」を招き、かえって算数の力を低下させてしまう危険性があるのです。
面積図や線分図は大切な解法ツール

面積図や線分図は大切な解法ツール

そこでお勧めしたいのは、「解法パターン」を反復練習させて覚え込ませるのではなく、「解法ツール」を身体に叩き込むという方法です。

「解法パターン」と「解法ツール」とは一体何が違うのかというと、前者は、たとえば「つるかめ算のときはこう解く、旅人算の時はこう解く」といったように、問題の分類によって分けられているそれぞれの解法のことを指します。一方後者は、「線分図」とか「面積図」といった、解答方法そのものを指します。

なぜこの「解法ツール」をマスターすることが「思考の硬直化」につながらないのかというと、「解法ツール」は「解法パターン」に比べてはるかに汎用性が高いからです。具体的にいうと、たとえば「線分図」は和差算にも倍数算にも分配算にも割合にも流水算を解くときにも使えます。「解法ツール」を学ぶことで拡散型学習が可能となり、切り口や表現を変えられても対応できるようになるのです。これまで習った「解法ツール」を確認してみましょう。
 

中学受験の算数勉強法の誤解3:ひたすら大量の問題を解くべし

勉強方法の誤解3つ目は、「算数は経験値がものをいう科目だから、ひたすらたくさん問題を解かせれば力がアップする」というもの。これは保護者の皆様のみならず、多くの塾講師も誤解している間違った常識です。この誤解が、大量の宿題につながり、それをこなすのに深夜0時、1時までかかって勉強をするという、中学受験の悪しき習慣を生み出した元凶と言わねばなりません。

忘れてはならないことは、算数の力は「計算力」「思考力」「ひらめき力」「センス」の4つで決まるということです。もちろん「計算力」を身につけるには、「誤解1」にも書きましたが、地道な日々の努力が必要です。しかし計算練習に1時間も2時間もかけるのは無駄ですので、これに時間がかかるということはありません。また「センス」は持って産まれた能力ですから、努力や根性で身につくという話ではありません。では大量の問題を解けば「思考力」「ひらめき力」は身につくのでしょうか。

大量の宿題をこなすことが、「思考の硬直化」を招くばかりでかえって算数の力を減じてしまうことにつながるということは、すでにご説明したとおりです。また大量の宿題をこなすことに精いっぱいの状況が続くと、子供たちは算数を苦役のように感じてしまいます。こうなってくるともう「ひらめき力」は期待できません。ひらめき力は脳がリラックスした状態で高まることが知られています。逆に脳がストレスや緊張を感じている時には、ひらめき力は低下してしまうのです。

さらに、大量の宿題をこなすのに精いっぱいの状態では、ただの流れ作業になってしまい、人は頭を使ってきちんと考えるということをしなくなります。覚えた「解法パターン」に数値を当てはめて計算しておしまいでは、「思考力」が身につく筈はありません。

そこでお勧めしたいのが、自分の実力よりもややレベルが高い問題を5~6問程度選び、1問1問についてじっくり考えながら解くというやり方です。時間に上限を設けて、例えば10分考えてもわからない場合は、解答・解説を見るなり、ヒントを出してもらうなりしてしっかりと解き切るのです。こうすることで「思考力」を身につけることができ、また問題が解けたという達成感から「β-エンドルフィン」という脳内物質が分泌され、脳がリラックス状態に入って「ひらめき力」も高まります。


保護者の方は、「なんとか苦手を克服したい」「なんとか成績を上げたい」と、たくさんのことをやらせようとしてしまいがちです。しかし大量の長時間にわたる学習は、子供たちにとって苦痛であるばかりでなく、効果の薄い学習法でもあります。「足し算の論理」ではなく「引き算の論理」で、受験勉強期間を上手に過ごしてくださいね。


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