「シャンデリア」は高級なイメージ
2007年に「シャンデリア物語-美しい輝きに魅せられて」を掲載しましたが、そこでも述べましたように、経済が成長して景気が良くなると、必ずと言ってもよいほど照明器具のシャンデリアが売れるようです。シャンデリアは言葉の響きが良く、家にシャンデリアが付いていると言うだけで、その家は富裕層であると思われるようです。消費税が導入される前に物品税という税がありました。これは間接消費税のひとつで、主に自動車や貴金属などの高級品を課税対象としていました。
照明器具では、シャンデリアに代表される、1基あたりランプが5灯以上ついている、いわゆる5灯用器具がその対象になっていました。したがって少しでも安く高級感を光で求めたい人は4灯用のシャンデリア器具を購入する傾向にあったようです。
クラシックシャンデリアの歴史
さて、その高級品と言われるシャンデリアの歴史を探っていくと、紀元前ギリシャ、ローマ時代に遡ります。当時、照明用の光源であるロウソクは高価なため、宮殿や寺院など、ごく限られた建築空間の照明に使われてきました。これらの主要建築は石造りで高天井のため、火の光を点ける場合、ある程度の明るさを得るにはどうしても多灯になります。こうして天井から吊り下げる多灯用器具を総称としてシャンデリアと言うようになったのです。
シャンデリアが登場したのは11世紀の初め頃で、その形状は車輪型、もしくは王冠型といわれるものでした。ロマネスク建築様式の寺院に使われた記録があるため、この形状をロマネスク風と言います。
ヨーロッパでは中世に入って宗教が一切を支配するようになると教会や寺院に集う多くの人々に平等の光をもたらすため、このようなシャンデリアは不可欠な存在となっていくのです。
シャンデリアはヨーロッパでも特別な階級にいる人たちのための明かりです。一般生活者にとっての照明は安価な油を使用した1灯用の置き型器具によるものが主流でした。
油は動物油が多く匂いと煤があって決して快適な明かりとは言えませんでした。安価な油と言っても一般生活者にとっては負担で、少しでも油の消費を減らすために、夜は早々と就寝し、翌朝からの生産活動に備えていました。
中世から近世にかけて、シャンデリアの進歩は目覚ましい物がありました。時代の変遷と共に人の身体感覚や生活行為も様変わりしていき、それに合わせて当然家具や建築のデザインも変化していきます。(図1)
その様式の変化に対応したシャンデリア器具が誕生してくるのですが、この歴史に登場しているシャンデリアを一般にクラシックシャンデリアと言っています。
私たちがクラシックシャンデリアで一番思い浮かべる様式はルイ王朝風だと思います。なかでも日本ではマリアテレジア風と、言われる形状に人気があります。
次のページでは、古今のシャンデリアに使用される光源についてご紹介します。