ビールとイタリア人
ピッツァといえばビールが合う-ペローニ社のビールとズッキーニの花をトッピングした白いチーズ・ピッツァ(Flickrよりcyclonebillさん撮影)
イタリアの家庭で、毎日ビールを飲むということはまずあり得ません。ビール文化は、北国のもの、イタリアでビールを飲むようになる伝統と歴史はワインと比べるとずっと浅いのです。
ペローニ・ビールのボトル(FlickrよりTobias Abelさん撮影)
どちらかというと、ビールは若者に好まれていていて、夜、友達と一緒にパブで飲みながらおしゃべりをするときや、ピッツェリアへ行ったとき、ピッツァととても合う飲み物として、ビールがよく選ばれます。ピッツァとワインを合わせる人は少数派。とくに南イタリア、ナポリでは、タラッリという塩味のスナックと、ビールの相性は抜群と考えられています。また冷えすぎた飲物は健康に良くないということから、イタリアではよく冷えた飲み物を飲む習慣がありません。夏でもソフトドリンクに氷を入れない人は多く、ビールもそれほど冷たくせずに飲んでいます。
イタリアの国民的ビール会社「ビッラ・ペローニ」
1965年以来、一世風靡していたペローニ・ビールの広告にでてくる初代金髪美女、ドイツの女優ゾルフィ・シュトゥービンク(Flickr by Hot Gossip Italia)
そんなイタリアを代表する国民的なビール会社が
ビッラ・ペローニ(Birra Peroni)です。ビッラとはイタリア語でビール、ペローニは創業者の名前です。ペローニ社のビールは、誰でも手軽に飲めるようにというコンセプトから、価格帯も低めです。そのため味もそれなりと、ちょっとバカにしてしまう人も少なくないのですが、ピッツァのようなファーストフードには、高級ビールよりもペローニの方がよく合うので、国内消費量はトップクラスです。ペローニ社は色々なブランドのビールを製造していますが、最も有名なのが以下の2銘柄で、イタリアのスーパーでは必ず置いてあります。
ペローニとナストロ・アズーロ
ペローニ・ビールの栓(FlickrよりSteven Depoloさん撮影)
ペローニ社を代表する銘柄は、もちろん社名と同名の
ペローニ(Peroni)です。創業以来の伝統を守ったラガービールで、アルコール度は4.7パーセント、やや苦く、温度は5度前後で飲むのが理想とされています。一方、やや高級路線の「赤のペローニ(Peroni Rossa)」というウィーン風ラガービールの銘柄もあります。こちらはダブル麦芽、アルコール度5.2パーセントで、濃厚な味わいを楽しめます。さらに創業150周年を記念し1996年から発売されているのが、黒ラベルのペローニ「Peroni Gran Riserva Doppio Malto」で、これはもっと強めのダブル麦芽でつくったラガービールの最高級銘柄で、アルコール度も6.6パーセントと高めになっています。
イタリア国内流通用のナストロ・アズッロのラベル(FlickrよりWarren Rohnerさん撮影)
もう一つの銘柄が、
ナストロ・アズーロ(Nastro Azzurro)。ドライで軽やかな味わいのピルスナービールで、ペローニ社のビールで最も愛され、知名度も高い銘柄です。アルコール度数は5.1パーセント、冷やす温度は8度前後が理想です。価格帯は普通の「ペローニ」と「赤のペローニ」の中間で、外食産業でよく出てくるのもこのナストロ・アズーロです。ただしラベルのデザインは、国内用と海外用で異なっています。世に出たのは1965年。ナストロ・アズーロとはイタリア語でブルーリボンのこと。最も速く航海した大洋航路船に与えられるブルーリボン賞を、1933年にイタリアの豪華客船レックス号が獲得したことに因んで命名され、その名に相応しく洗練されたビールです。
歴史あるペローニ社
20世紀初頭のビッラ・ペローニの広告絵葉書より
1846年、北イタリア・ロンバルディア州の町ヴィジェーヴァノで、フランチェスコ・ペローニが創業。1864年、ローマに支部工場が建設され、イタリア王室サヴォイア家御用達にもなるまで成長しました。2代目ジョヴァンニの時代である1901年には、ローマのマントヴァ通りに新しい工場を構えて周辺に次々と増築、さらには南イタリアのバーリとナポリにまで工場が置かれました。ローマの工場は1970年代に役割を終え、ローマの中心から東へ約10キロ離れたアレッサンドリーノ地区にて現在の工場が操業。この敷地内に2001年、
ビッラ・ペローニ博物館も開設されました。
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Archivio Storico e Museo Birra Peroni (ビッラ・ペローニ博物館と歴史資料館)
見学日:月~金(要予約、最低人数・紹介状が要る場合もあります)
料金:無料
住所:Via Renato Birolli, 800155 Roma
TEL:+39 06 225441
メール:museo@peroni.it
建築と現代アートへの意気込みも
ローマ・ベルガモ通りにあるペローニ社の旧工場 (c)Ewa Kawamura
ローマの旧工場群は、ピア門(Porta Pia)近くの3つの通り(via Bergamo, via Mantova, via Nizza)に集中しており、どれも20世紀初頭のリバティ様式の興味深い建築です。なかでもニッツァ(イタリア語でニースのこと)通りにある旧工場には、通称MACRO(マクロ)と呼ばれる現代アート美術館が置かれていて観光スポットにもなっています。なおロンドンには、現代アートで飾ったとてもカッコいい美術館を兼ねたフラッグショップ「
The House of Peroni」も近年開設されています。
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ローマ現代アート美術館(Museo di Arte contemporanea di Roma、略称MACRO)
見学時間:11:00~19:00(火~日)、11:00~22:00(土)、月曜と祝日(12月25日、1月1日、5月1日)は休館、12月24日と31日は14:00まで
料金:12,50ユーロ(Testaccioにある分館との共通券は、14,50ユーロ)
住所:via Nizza 138, 00198 Roma (旧ビッラ・ペローニ工場内)
TEL:+39 06 67 10 70 400