イタリア周遊ドライブにあらず、走りに走った4日間
2014年のエントリー台数は史上空前の450台。20秒毎に走らせても、すべてが通過するのに2時間半かかる計算だ。伝統に則って、スタートとゴールはブレシア。首都ローマで折り返す。途中には、ヴェローナ、パドヴァ、フェラーラ、サンマリノ、アンコーナ、シエナ、ピサ、ルッカ、ボローニャ、モデナ、マントヴァといった、観光名所が多数。イタリアの古い街々を訪れることもまた、ミッレミリアの醍醐味のひとつ……。とまぁ、スタート前には、この際イタリアを存分に楽しんでやろうと思っていた。正確さを競うラリーもまた、練習やチームワークが大いに問われる競技である。そう簡単なものじゃない。上位入賞など夢みる方がおかしくて、100位以内に入るようなエントラントはいずれも百戦錬磨の達人ばかり。ヘンドリックとはリラックスして楽しもうぜ、と言い合って、いちおう目標を200位以内においてスタートに挑んだのだった。
けれども、終わってみれば、走りに走ったというほかない4日間で、通り過ぎた街々の記憶もまばら、風光明媚な景色にしてもほとんど夢幻の記憶(アタマに最も残った映像といえば、コマ図とラリーメーターのデジタルカウンターの絵柄だ)。好きなクルマでイタリア周遊ドライブ、なんて甘っちょろいもんじゃなかった。
たとえば、2日目。朝6時にホテルを出て、パドヴァ郊外のスパリゾート街をスタート。いっきに800km以上南下して首都ローマを目指したわけだが、無事ゴールし、そのまま市内のイベントに参加してホテルにたどり着いてみたら、時計の針は翌日の1時を指している始末。そこからパスタを頬張って、寝たのは2時過ぎ。そして翌朝、また6時に駐車場へ……。
ラリーとはいうものの、平均速度の設定は時速45km/h前後。そう聞くと、なんだフツウの市街地速度じゃないか、と思われるかも知れないけれど、高速道路を使わず、いくつもの街々を訪れて、ランチもとって、いくつかの競技をこしながらの平均45km/hである。当然、オープンロードではほとんど全開! シートベルトもなく、身体を半分以上さらけだした戦前のスポーツカー(しかもBMW328といえば現在1億円! はくだらないヴィンテージカーだ)を全開にして走る、しかもほぼぶっ通しで……。それが4日に渡って繰り広げられるわけだから、過酷だ。