前提を疑うことからデザインは始まる
深澤氏考案。雨の日の買い物。傘の柄にちょっとくぼみがあれば便利。
しかし、そういう「モノ」も開発しつくされた今、「モノ」をいかに壁側や人間側に取り込んでいくか。「丸でも角でもいいけど、本当にそういう傘立てが必要なのか?狭い玄関に傘立てを置く必要があるのか?壁にかけたり、傘の先を入れる溝さえあればいいのではないか」と前提を疑うことから始めるのがデザインであると深澤氏は言います。
あらゆるモノは「住宅の壁」か「人間側」に吸い込まれていく
デザインは言葉力と定義力から始まる
画家マチスは全体を俯瞰するために長い筆を使って描いていた、と深澤氏。
「美とは、人とモノと環境の関係が調和していることをいう。皆が美しいというのは、皆が同じ環境・状況・価値観を共有しているからであるが、これは時やあるきっかけで簡単に変わりうるもの。だから美しさは不変でも普遍でもない。デザインとは、美・世界・形を改めて定義づけ、空気(空間)に新たな輪郭を引く行為のことである」(深澤氏)。
こうした言葉による定義づけもそれだけで明確なのですが、自らデザインして国内外で評価されたプロダクトのビジュアル写真とともに説明されることで、日本だけでなく世界や老若男女誰もが納得できるのだと実感しました。
一見カタチがなくとらえどころのないデザイン。それを形作っているのは、曲線や直線とかの違いではなく、言葉とそれを表現するビジュアルイメージが根柢にあると気づかされたフォーラムでした。