マネジメント/マネジメント事例

ガバナンス3要素から分析 組織「理研」の問題点とは(2ページ目)

STAP細胞問題に揺れる理研。同社の改革委員会は調査報告書をまとめ、抜本的改革を求める提言をしました。その中で理研および発生・再生科学総合研究センター(CDB)は「ガバナンスに問題あり」と厳しく糾弾されています。ここに使われたマネジメント用語「ガバナンス」とは何か。理研にはどのような問題があったのか。実情検証を交えて解説します。

大関 暁夫

執筆者:大関 暁夫

組織マネジメントガイド


ガバナンスが機能しなかった理研の実態

さて、これらのコーポレート・ガバナンスの考え方をもとに理研の状況を検証してみます。まず、大前提は理研と言う組織が独立行法人であるということ。独立行政法人は、各府省の行政活動から政策実施部門のうち一定の事務・事業を分離し、これを担当する機関に独立の法人格を与えたもの。基本的に株主は国であり活動費は税金で賄われているわけですから、国民が株主であるのと同じことです。

すなわちガバナンスの第一条件「経営の透明性」については国民に対する情報開示が求められます。この点で独立行政法人は法に定められた頻度と方法により経営情報開示はなされているわけで、その意味では理研の場合もクリアされていると言っていいでしょう。

解説

理研は施設公開をするなど情報開示には務めているが…

問題は二番目の「アカウンタビリティ」です。理研にとって今回のSTAP細胞問題は、確実に組織運営に重大な問題を提起するような事象の発生時であったわけですが、「アカウンタビリティ」の観点から適切な対応なされていたかと言えば答えはノーであると思います。組織内の事実確認すらおぼつかぬまま納得性の高い状況説明もなく、バラバラに関係者が会見しお互いの主張をぶつけ合うだけの様相は、メディアをにぎわせた以上の何ものでもありません。税金により運営される組織の株主たる国民に対して理研の説明責任は全く果たされていないと言っていいでしょう。

さらに三番目の「経営コントロール」に関しては、改革委員会も報告の中で指摘しているとおりです。実験者の長期政権化による採用および人事運営をはじめとする意思決定方法の私物化が健全な組織運営を損う状況にあったことは疑う余地のないところ

また、意図的であるか否かにかかわらず、不正を的確にチェックできなかったことから同社の不正防止システムは全く機能しておらず、組織のリスク管理上からも大きな穴が空いていたと言わざるを得ないでしょう。

このように理研では、税金で運営される独立行政法人としてのあるべきコーポレート・ガバナンスが、法で定められた「経営の透明性」以外全く機能していなかったと言っていいのです。STAP細胞問題を単に理研の研究体制の見直しにとどめず、独立行政法人全体のガバナンスの実態を検証するいい機会として捉えるべきではないでしょうか。
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