ガバナンスが機能しなかった理研の実態
さて、これらのコーポレート・ガバナンスの考え方をもとに理研の状況を検証してみます。まず、大前提は理研と言う組織が独立行法人であるということ。独立行政法人は、各府省の行政活動から政策実施部門のうち一定の事務・事業を分離し、これを担当する機関に独立の法人格を与えたもの。基本的に株主は国であり活動費は税金で賄われているわけですから、国民が株主であるのと同じことです。すなわちガバナンスの第一条件「経営の透明性」については国民に対する情報開示が求められます。この点で独立行政法人は法に定められた頻度と方法により経営情報開示はなされているわけで、その意味では理研の場合もクリアされていると言っていいでしょう。
理研は施設公開をするなど情報開示には務めているが…
さらに三番目の「経営コントロール」に関しては、改革委員会も報告の中で指摘しているとおりです。実験者の長期政権化による採用および人事運営をはじめとする意思決定方法の私物化が健全な組織運営を損う状況にあったことは疑う余地のないところ。
また、意図的であるか否かにかかわらず、不正を的確にチェックできなかったことから同社の不正防止システムは全く機能しておらず、組織のリスク管理上からも大きな穴が空いていたと言わざるを得ないでしょう。
このように理研では、税金で運営される独立行政法人としてのあるべきコーポレート・ガバナンスが、法で定められた「経営の透明性」以外全く機能していなかったと言っていいのです。STAP細胞問題を単に理研の研究体制の見直しにとどめず、独立行政法人全体のガバナンスの実態を検証するいい機会として捉えるべきではないでしょうか。