マクドナルドとモスバーガーの戦略的相違点
前回に引き続き企業の競争関係における基本戦略について、身近で分かりやすい具体例で検証してみてみましょう。まず、キーワードとなるコストリーダーシップ戦略と差別化戦略についておさらいです。コスト・リーダーシップ戦略とは、より安価な製品価格の提供により競争優位に立つ戦略のこと。差別化戦略とは、他社との差別化をはかり競争を優位に運ぶ戦略のことです。
基本3戦略におけるコストリーダーシップ戦略と差別化戦略は対の関係にあります。規模の利益を背景とした業界トップ企業のコストリーダーシップ戦略の対抗戦略として二番手以降の企業が差別化戦略を繰り出すケースが多いのですが、国内においてはその典型例をファーストフード業界に見ることができます。最も分かりやすいのは、ハンバーガー業界です。国内で安価な食事を提供する新業態として昭和40年代に登場したマクドナルド・ハンバーガー。まさにファーストフードの代名詞として、雨後の筍のごとく日本中に勢力を拡大しました。マクドナルドに遅れること1年。ロッテリアとモスバーガーが業界参入します。
「早い」「安い」がウリのハンバーガー業界にとって、業界リーダーたるマクドナルドの戦略はアメリカ仕込みのローコスト・オペレーションを背景として、一定の品質を保ちながら低価格化を徹底するコストリーダーシップ戦略でありました。遅れて同じ路線で戦いを挑んだのはロッテリア。一部メニューでの差別化はあったもののメインメニューであるハンバーガーにおいては常にマクドナルドとの価格競争に挑みますが、アメリカ生まれのブランド力と圧倒的な経験的ノウハウに勝るマクドナルド優位は動かず、「永遠の二番手」に甘んじざるを得ない状況が長く続いたのです。
モスバーガーは典型的な差別化戦略で業界2位に躍進した