あらたな労働時間制度では、自律型人材の育成が重要となる
自律型人材をいかに育成するかが問題
上司による部下の管理も、従来のような出退勤管理ではなく、成果管理に完全に移行します。欠勤・遅刻・早退や年休取得状況の管理は、ほとんど意味を持たなくなり、部下が成果をどう創出しているかをしっかり管理することになります。そのため部下マネジメントは、部下を自律型人材に育成することに主眼が置かれるようになるでしょう。
自律型人材とは、自ら考え、主体的に行動し、仕事を通じて学習することができる人材のことです。あらたな労働時間制度では、上司が労働時間を厳格に管理するのではなく、部下が個々人の裁量で働くことになりますので、上司としては、部下自身がPDCAサイクル(計画→実行→チェック→アクション)を回して、成果獲得プロセスを自己改善し、自己成長していけるように後押しする役割を担います。
新たな労働時間制度では、部下の裁量度が高くなるだけに、上司が適切なマネジメントを行わないと、部下は糸が切れた凧のようになってしまい、最終的な成果は実現できなくなります。このようにあらたな労働時間制度の創設で、個々人の働き方だけでなく、上司のマネジメントも変わります。上司も自己変革しなければならないのです。
部下を自律型人材に育成するメリット
部下を自律型人材に育成することは大変な労力が必要ですが、一方でメリットもあります。たとえば、あらたな労働時間制度では、労働時間ではなく「成果」で評価されますが、この最終的な「成果」をどう定義するかについては部下と相対で決めることになります。自律型人材であれば、普段から主体的に業務や組織の課題を抽出し、明確なゴールイメージ(成果イメージ)を持って行動しているので、上司と最終成果を共有することは比較的容易となります。自律型人材の対極である受動型人材の場合は、そうはいきません。言われたことしかやらない、言われるまでは行動しないといった受動型人材は、自ら目標を設定し行動する習慣が無いので、成果イメージが持てません。そのため上司が具体的な成果目標を決めて、部下に与えてあげることになり、部下としてはやらされ感だけが残ります。上司のマネジメントも成果管理ではなく、ノルマ管理に近いものとなり、日常的に部下にムチを振うことで、上司自身も疲弊してしまいます。
自律型人材のよい点は、上司に指摘される前に、自分の判断で顧客の要望や市場変化に素早く対応しようとすることです。自律型人材が増えれば、現場の運営のスピードが格段に速まり、組織の生産性が向上します。上司がいちいち指図をする必要が無いので、上司も楽になります。
次回は、自律型人材の育成法について解説します。
部下マネジメントの基本については、「厳選100項目で押さえる管理職の基本と原則」にも詳しく記載しています。