目の疲れが引き起こす経絡の異常
東洋医学の世界観では、あらゆるものを「木・火・土・金・水(もく・か・ど・こん・すい)」という五行の要素に分類しますが、目はこの分類では木の要素に属します。目に長時間のストレスが加わると、同じく木の属性を持つ臓腑である肝(かん)の働きを弱める原因となります。
この肝は、全身に栄養を分配する働きを持つ血(けつ)を貯蔵する役割を持っています。また、肝は同時に血の運行や身体の防衛機能の源となる気(き)の流れを調節する作用も担っているため、肝の働きが低下すると血がスムーズに運行しなくなり、身体に栄養が行き渡らず筋肉などの力が低下すると考えられます。
このため姿勢を支える筋力が衰えたり、手足のしびれが発生するなどの症状が発生すると考えられます。さらには肝の気は上昇する習性を持つため、頭部などの人体の高い部分に停滞し、目の充血や頭痛、頭重などを引き起こします。
また、肝は気持ちの状態にも大きく影響を与えると考えられています。人間の感情は気血が調和することで安定が保たれるのですが、肝の気が停滞することで抑鬱状態になると言われています。
こうした身体や精神に発生する状態は、疲れ目の原因が目を動かす筋肉の機能低下にあることや、先に述べた労働省において平成10年に実施した「技術革新と労働に関する実態調査」に述べられている精神的疲労を感じているものが36.3%、身体的疲労を感じているものが77.6%という実態に非常に近いものであると言えるのではないでしょうか。
目の症状に効果的なツボ
これらを踏まえ、疲れ目や眼精疲労の改善に効果があると考えられるツボについて紹介していきたいと思います。肝の気を補う曲泉
まず肝の気を補うことが目の症状や頭の重さ、首肩の痛みや精神的疲労の改善に有効であると考えられます。肝の気を補うために有効なツボは第一に「曲泉(きょくせん)」が挙げられます。
曲泉は肝の親に当たる五行の属性の水(すい)に属しているツボであり、優しく押すことで子である木の属性をもつ肝にエネルギーを与えることができます。
曲泉は膝を曲げた時に出来るシワの内側の端、大腿骨の際にあります。目以外にも男女問わず生殖器や泌尿器疾患、腰痛などにも有効であると考えられています。
太衝は肝の気を補い目の症状を改善すると考えられる
また、太衝(たいしょう)も肝の気を補うために非常に有効と考えられています。足の甲側で、親指と第二指の中足骨の間をさすっていき、骨同士がぶつかった所にあります。
この太衝は肝のエネルギーが発生する源と考えられており、そこにお灸やマッサージなどエネルギーを補うような刺激を行うと肝の気の流れがスムーズになり、目をはじめとする症状の改善が期待できます。
疲れ目は現代医学では目のオーバーユースが原因と考えられていますが、東洋医学の世界観では肝の気が停滞することから目、頭、首、さらには精神的疲労までもが発生するとされていますが、実際の症状とも非常に当てはまっているところが興味深いところではないでしょうか。
定期的に休養をとっているのに目の痛みや重さや気分の抑鬱などを改善できない場合は眼科や神経内科などを受診される必要がありますが、ぜひツボを使った改善方法も試されてみてはいかがでしょうか。