「基本的信頼感」は赤ちゃん時代につくられる

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泣き声に応えることは、基本的信頼感を育む

赤ちゃんはお腹がすいたり、飽きたり、不愉快だったりすると、周囲の状況などお構いなしに泣き叫びます。泣くことで、自分の気持ちを表しているのです。

一昔前の育児論では、「抱き癖がつくから、赤ちゃんが泣いてもすぐに抱っこしないで」が常識でした。「泣くたびに抱っこすると、赤ちゃんは抱っこを求めて甘え続け、わがままになる」というのがその理由。泣いても取り合わなければ、たしかに赤ちゃんは大人しくなります。しかし、これは泣くことによる感情表現を諦めてしまうからです。

発達心理学者のエリクソンは、「基本的信頼感」は赤ちゃん時代につくられる、と説きました。基本的信頼感とは、「人も世界も、自分自身も信頼することができる」という感覚。人間が初めて獲得する心の発達課題です。

この基本的信頼感がなければ、家族も信頼できず、人とかかわりあって生活することができません。自分が生きている世の中も信頼できないので、いつでも不安でいっぱいです。また、自分自身も信じられないので、生きていく自信が湧いてこないのです。

「この世界で安心して生きられる」という感覚

この基本的信頼感は、多くの場合、主たる養育者との関係の中で築かれます。

養育者がいつもそばにいて、自分の面倒を見てくれる。泣いて不快感を示すと、「お腹すいているの? 眠いの?」と気にかけて、欲求に応えてくれる。さびしいときには抱っこをして、微笑みかけたりやさしくなでたりしてくれる――このように、自分の気持ちに応えてくれる養育者を心から信頼できると、生きていく安心感をつかむことができます。

ところが、養育者が泣いている赤ちゃんを放置し続けたり、泣くたびに怒鳴ったり、叩いたりしたら、どうなるでしょう? 赤ちゃんは安心することができず、自分の素直な気持ちを表出することもできなくなってしまいます。

基本的信頼感は、その後の人生のベースとなる

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自他を信じられる感覚は、人生の「土台」

泣きぐずる赤ちゃんとの付き合いは、しんどいものです。しかし、「いま赤ちゃんの要求に応えることで、後々の子育てが楽になる」と考えれば、少し気持ちが楽になるのではないでしょうか?

基本的信頼感を確立していれば、基本的に自他を信頼することができるため、集団生活にも自然に溶け込みやすくなりますし、自分から自立に近づいていきます。この基本的信頼感が確立していないと、自他を信頼できないため、生きにくさを感じやすくなってしまいます。

ちなみに、ワーキングマザーは育児休業期間にしっかり赤ちゃんと密着して生活することが、子どもの心理的発達にとても大きな意味があるのです。とはいえ、早めに職場復帰をしたとしても、お母さんに代わる養育者(保育士など)との間で、しっかりした信頼関係を築けるなら、大丈夫です。

ただし、代わりとなる養育者は、お母さん自身が信頼できる人を選ぶことをお勧めします。たっぷり「マザーリング」(お母さんのような愛情とスキンシップで接すること)をしてもらえるか、赤ちゃんがその人と一緒にいると安心するか、こうした点をよく見極めることも大切ですね。

基本的信頼感は、人間が他者との関係で最初に築く心の「土台」。人は皆、この信頼感をベースにして人生を築いていくのですから、赤ちゃんとの間でしっかりと信頼関係を築いていきましょう。
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